昨年4月に「ブラック」、同6月に「ラテ」を発売したサントリー食品インターナショナルのコーヒーブランド「ボス」の新シリーズ「クラフトボス」。発売直後から大きく売り上げを伸ばし、昨年12月末時点で1000万ケース(2億4000万本)を突破。コーヒーカテゴリーの商品としては異例となるヒット記録を打ち立て続けている。
丸みのあるクリアなペットボトルに透明なラベル。「クラフトボス」はその外観からも、従来の「ボス」ブランドとはまったく異なる印象を受ける。同商品の開発担当であるサントリー食品インターナショナルの桜井弓子氏は、発売直後から売れ続けている理由について、「コーヒー飲料に対する先入観をうまく崩すことができた」と分析する。リピーター獲得の背景にある戦略とは。
―コーヒーカテゴリーの商品としては異例とも言える販売数量の伸びですが、その理由をどうお考えですか。
リピーターが多いことに加え、お茶や水などの他カテゴリーからの流入、そして女性の購入者も多いということが販売数量を伸ばしている大きな要因です。「クラフトボス」はブラックもラテもさらっとした飲み口が特徴であるため、ごくごく飲みやすいということがリピートにつながっているのだと考えています。
実は、6月に発売したラテは発売直後から予想をはるかに上回る売れ行きで、発売4日後に販売を休止せざるを得ない状況となってしまいました。その背景には、先行発売したブラックを「すっきりして飲みやすい商品」と評価いただけたことがあるように考えています。それで同じシリーズのラテにも、期待をお寄せいただけたのではないかと。
ラテの販売は10月に再開できたのですが、その後ソーシャルメディアなどで消費者の反応を見ていると、やはり飲みやすいという面で、お茶や水などの代わりにお菓子と一緒に飲んでいただいていることが多いようです。
また、「大人はブラックコーヒー」という潜在意識をどこかで持ちながら、ブラックコーヒーの苦味が元来あまり得意ではないという方が思いのほか多いようです。「クラフトボス」のブラックは苦味がひかえめなので、流入してきていただいている方も多いという印象です。
さらに、既存の缶コーヒーは購入者の約9割が男性であることに対して「クラフトボス」は女性の割合も大きく、男女比率はブラックが7:3、ラテが6:4と、これまでのコーヒーカテゴリーではあまり見ないような構成比も特徴です。
―そもそも開発に至った経緯はどのようなものだったのでしょうか。
既存商品である缶コーヒーのショート缶は肉体労働をメインとしている方々に支持され、ボトル缶は主にオフィスワーカーの方々に支持されています。しかし最近では働き方の多様化によって、ITワーカーに代表されるような、働く時間も場所も自由な人が増えつつあります。そういった方たちに手に取っていただける商品を開発しようというのが、そもそもの始まりです。
また、最近ではコンビニがオリジナルで提供するコーヒーの人気も高く、コーヒーカテゴリーの競争は激化しています。ただ、逆に言えば、コーヒーを求めてコンビニを訪れる方が増えているということでもあるため、チャンスでもあるととらえているんです …