クリエイターのアイデアとAIがかけ合わさることで、より良い未来づくりに繋がるかもしれない。電通Future Creative Centerの志村和広さんが可能性を模索する。
AIを「手段」としてどう使う?
今回は前回触れた、AIを「手段」として活用することでクリエイターがこれまで以上にアイデアで勝負できる、ということの具体例についてお話しします。
私がAIがクリエイティブにとって最高の「手段」だと確信したのが、前回ご紹介したTUNA SCOPEでの経験でした。
TUNA SCOPEは、マグロの目利き職人(仲買人)の目をディープラーニングすることで生まれた世界初のマグロの品質判定AIです。これを開発した2018年、世界中のメディアから「このAIは、既存の職人の職を奪うと思う。そこに軋轢は生じなかったか?」という質問をされました。当時から数年経ちましたが、結果としては「生じなかった」です。なぜなら彼らの仕事の目的は、「品質の良いマグロをお客さんに提供すること」。目利きはそのための手段です。その証拠に日本各地の職人さんから継続的にデータを提供してもらうことができ、AIは彼らのよきパートナーになりました。結果としてマグロの品質もより安定し、今後、より長く仕事を続けられるようになったり、新事業を始める時間に費やせたりするかもしれません。
世界の事例でも、ポテトチップスメーカーのLay'sがインドで契約農家に提供した「Lay's Smart Farm」は...