2016年グッドデザイン賞は、昨年に引き続きとなる永井一史委員長、柴田文江副委員長のもと、総勢76人(うち海外11人)の審査委員会を編成し、約5カ月をかけて審査。審査対象数4085点に対し、受賞作品1229点が発表された。永井審査委員長に本年度の審査について聞いた。
これまでのデザインを見直し新たな視点を得る
近年、社会が成熟し、生活者がデザインに求めるものが変化してきていると感じます。これまで、社会では新しいものを次々と消費してきました。いま、身の回りに一通りのものが揃い、何をリプレイスするかという時に、何か突出したものではなく、自分の暮らしと馴染むようなデザインが求められています。デザイナーもそこに着目し、これまで使われてきたもののデザインを見直す傾向にあり、日常の場面の中で生かされるデザインの応募が多く見られるようになりました。経済成長の鈍化や、震災など自然災害の発生も、その背景にあると考えられます。
グッドデザイン賞の審査はここ3年ほどで大きく変化しました。これまでの、Web上でのエントリー作品一次審査、実際の作品を前に審査委員が議論を交わす二次審査のプロセスに、3年前から応募者と対面する審査を任意で加えています。対面での審査は、プレゼンをしてもらうのではなく、審査委員から応募者に質問をする機会。エントリーシートだけではわからなかった部分の確認や、制作者の意図、デザインの背景などを聞いて、審査の材料としています。
今年度のグッドデザイン大賞「オーサグラフ世界地図」は、デザインはもちろんですが、私たちに新しい世界の捉え方と視点を与えてくれたことが高く評価されました。従来のメルカトル図法を用いた地図では、位置や大きさが本来とは異なって表示されていましたが、「オーサグラフ世界地図」は、大きさや形の歪みをおさえた正確な四角い世界地図です。世界的には …