オークションを上手く使うために復習したい、5回の連載
この連載も、本稿で最終回だ。過去5回のオークションについての熱い連載を読まれてきたあなたは、オークションの世界についてなかなかクリアなイメージが湧いてきたのではなかろうか。もしかしたら、「よし、我が社も単なる値付けをしている場合ではない。いっちょオークション使ってみるか!」となった方もいるかもしれない(第4回参照)。でも、少し具体的に考えを進めると、行き詰まること請け合いである。
確かにノーベル賞を与えられただけあって、オークション理論は「4つのオークションルールのどれを使っても収入が同じ」などの示唆に富む結果を多く生み出してきた(第3回参照)。しかし、実際に企業が直面する問題にこういった理論を応用しようと試みると、往々にして一筋縄ではいかない。これは、結果を生み出すためのモデルの仮定が現実の問題においてすべて満たされるとは限らないからだ。だから、現実の問題に即してモデルを微修正し、適切なオークション設計をする必要がある。
1つ例を挙げよう。前稿にて2020年のノーベル経済学賞の受賞理由である「勝者の呪い」の話を書いた(第5回参照)が、実はもう一つ受賞理由がある。それは、「新しいオークションルールの設計」だ。受賞者たちは、「商品を複数同時にうる際のオークション」という難しい現実の問題において...
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