「食」は自己表現の手段のひとつ 価値をどのように伝えるか
支出に占める食費の割合をエンゲル係数といいます。所得が高くなるほどエンゲル係数が低下するという法則を耳にしたことのある人も多いのではないでしょうか。その一方で、日本は諸外国に比べ、所得が高くなってもエンゲル係数があまり下がらないことが知られています。つまりは所得が上昇すると、その所得上昇と同じくらいより高いものを食べるようになるというわけ。
多くの日本人にとって、食事はカロリーを摂取するだけのものではありません(むしろカロリーは低ければ低いほど歓迎されるでしょう)。少々大げさに表現するならば、食は自らの世界観や意識の表現・確認の手段でもあるのです。
先進的な有機農法を実践している農業者から月極で野菜セットを購入しているという消費者にとって、商品の購入は農業への敬意の表現、またはさらにそのような高い意識を持つ自分を確認する手段なのです。また、麻布の会員制ダイニングで食事を楽しむ人にとっては「その場所で食事をする自分」に酔うことこそが最高の調味料なのではないでしょうか。
食に関わる事業においては、その他の商品・サービス以上に「自社・自店が販売しているものは何なのか」という経営戦略の基本を常に確認し続ける必要があります...
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