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デジタルにとどまらないUX戦略 「体験の質」から考えるブランド構築

欧米企業が取り組むUXアプローチ-ユーザー体験を起点に描く企業戦略

これからのブランド戦略には「UX戦略」が不可欠という課題と対峙したとき、どのように「UX」視点を企業活動に取り入れていくべきなのでしょうか。UX戦略のコンサルタントとして活躍する篠原稔和氏が経営、マネジメントの視点から解説します。

Greg Petroff氏がGEのCXOとして「Sociomedia UX戦略フォーラム 2016 Spring(2016年5月26日)」に登壇した際のもの。同氏はその後、米Google社のGeneral Managerを経て、2018年より米ServiceNow社のグローバルデザイン責任者。

経営戦略として取り組まれ始めた体験価値の創出

ユーザーの体験そのものを起点としたアプローチであるUX(User Experience)を、企業戦略の根幹に据えて取り組むことを「UX戦略(UX Strategy)」あるいは「エクスペリエンス戦略」と言います。

ここでは、ユーザーに接する担当者や部門だけではなく、企業全体にUXの考え方を浸透させることが大事なポイントです。そのことによって、実際の製品やサービスを変革するだけでなく、企業全体がユーザーを起点とした風土・文化、日々の習慣へと変化していきます。そして、永続的なサービス開発の実現や企業への好感度の向上、そして、サービスや企業そのものへの忠誠心を育むブランド価値をもたらすことにつながっていくのです。

例えば、GE(ゼネラル・エレクトリック)はわずか5年あまりで、事業を情報サービス分野にシフトすることに成功しました。その背景には、企業戦略の中核に体験価値を据える「UX戦略」がありました。

UXの専門家を招聘して役員(CXO:エクスペリエンス担当役員)に据え、産業用OSといったプロダクトデザインのUX開発と同時に、当時のCEOやCMOと綿密な連携をとって、全社員のデジタルに対応したワークスタイルの変革(FastWorksといった仕事の進め方など)を促す活動をUX関係者が担当したのです。

図表1 体験価値の拡がり

サービスや開発部門でもユーザー視点が中核に

このユーザーを起点とするための流れは、企業のさまざまな部門や立場で同時多発的に起きている現象であって、その用語や言い回しもそれぞれで違うカタチで姿を現しています。

例えば、顧客に対峙する営業部門や顧客サポート部門、そして宣伝担当の部門に端を発する「CX(Customer Experience)」、システム開発部門からの「リーンスタートアップ」といった手法における「顧客開発」、品質管理部門からの「利用時品質」、サービス開発部門からの「サービスデザイン」、新事業開発部門からの「グロースハック」や「SPRINT」、そして、経営部門からの「デザイン思考」などがあります。

これらの現象は、いずれも「ユーザー体験(UX)」を起点としたアプローチと同義の流れがあり、その中核にはサービスや製品を実際に活用するユーザーの体験に着目するための諸活動があります。

すなわち、ユーザーの実際の体験を捉える(CATCH)ための活動(観察、インタビュー、テスト等)と、そこからのシーズやニーズを実際のカタチにしていく(TRY)ための活動(設計、制作、プロトタイプ開発等)とを繰り返していくサイクル(HCD(人間中心設計)・UCD(ユーザー中心設計))を内包しています。

図表2 エクスペリエンスの中核

「UX戦略」が重要視され始めた3つの時代背景

そのような中、国内企業において、「UX戦略」を重要視するようになってきた原因を、3つの観点からみていくことができます。

まずひとつめは、企業の「グローバル対応」からの要因です。企業が提供する製品やサービスを、国内市場の成熟期に伴い、海外に向けて提供する際、競合となる欧米の製品やサービスをベンチマークしてみると、圧倒的な利用者の体験価値に直面することになります。さらに、その競合企業の組織体制や姿勢に圧倒される事態を迎えるのです。そこでは、UXを始めとしたデザイン人材の大量採用や、そのデザイン人材を中核とした全社員に対する体験価値を注入するための教育活動の実践があります …

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