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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

伝えたい体験をデザインでコミュニケーションする

野口孝仁(ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート)

デザイン制作を発注する際、上記要素のチェックは不可欠。

まずは明確な着地点を決める

デザインのディレクションには、大前提として絶対に押さえておかなければならないことがあります。それは、制作するものがパンフレットであれ、チラシであれ、「明確な着地点を決める」ということです。

それは、次のような要素を明確にすることで自ずと決まってきます。まず挙げられるのは「ターゲットは誰なのか」ということ。これは、パンフレットやチラシを渡したい相手がどんな人たちなのかということです。今はまだ自社の商品・サービスを知らない新規客か、それとも以前、商品・サービスを利用してくれた人たちが対象なのか。また、性別・年齢層やどういう職種か、どのくらいの所得の人たちなのかも想定されていると良いでしょう。

次は「なぜ、そのパンフレットやチラシをつくらないといけないのか」という目的です。例えば「新製品が発売されたので、広く告知したい」、あるいは「今、キャンペーンを実施しているので告知したい」など、さまざまな状況があると思います。この“なぜつくるか”の目的が明確でないと、完成した印刷物は効果が期待できなくなってしまいます。

そして「印刷物の用途」です。送るのか、店置きするのか。送るなら郵送できる形状にしなくてはなりませんし、紙の重量なども考慮する必要があります。店置きでスタンドに立てるなら、見える部分に「手にとってもらえる工夫」が必要となりますし、何か仕掛けが要かもしれません。

この他に必須なのが予算とスケジュール、印刷部数です。これらを総合して、提案できる形状や印刷方法などが自ずと決まってきます。このような要素は発注する場合のまさに基本中の基本ですが、制作サイドにしっかり伝えることが大切です。それを踏まえて理解した上で、それらの条件下で最大限に効果的なものを提案するのが、私たち制作者の仕事です。予算が厳しいなら、カラー印刷と言われてもあえて色数を抑えてコストダウンし、代わりにマットな紙を選び、一部にツヤニスを施してテクスチャーで目立たせるなど、条件が許す範囲で最も効果が期待できるデザインをつくり出すことこそ、制作者の思考とアイデアの成果だといえます。

日常でさまざまなアンテナを張る

着地点が明確に決まっていれば、完成度の高いディレクションができるかといえば、それだけではありません。普段から印刷物に必要な要素について、それなりに情報を集めておくことも大切です。

例えば今、環境問題は企業としては絶対に取り組んでいかなければいけない問題です。「環境問題に真摯に取り組んでいる」というアピールのために、再生紙を使う場合があります。しかし、「再生紙=環境に優しい」「CO2を出さない」とは言えない。実際には再生紙をつくるために、化石燃料の使用量が増え、CO2排出量が増えてしまっている場合もあります。

このように、紙の種類一つを例にとってみても、それに対する知識を発注者側が持っていた方が良いことも多いのです。どのような紙にどのような特徴があり、さまざまな社会問題に対応するには、どのような紙を使えば良いか、インクについてはどうなのかなど、知っておくべき知識はたくさんあります。それについて、もし知識がなかなか集められる状態にないのなら、そういうことこそ制作者に相談してください。デザイナーは印刷や紙などに関する専門知識を、普段から意識して集めているものだからです。

それから、発注者の方ができるのは、日常的に良いと思ったデザインのパンフレットやチラシに出会ったら、クレジットを調べてデザイナーやカメラマン、イラストレーターの名前をストックする、カメラマンやイラストレーターの個展などがあったら足を運んでみることです。また、競合他社のパンフレットやDMなどを集めてストックしておき、良い点・悪い点を分析してみるなど、デザインを見る目を養い、日頃から考えるくせをつけておくことも大切です。そうしてベースを築くことで、制作者に具体的なイメージや使いたい写真やイラストの雰囲気、タッチなどの希望を明快に伝えることが可能になります。そうすれば、制作者にも発注者の意図がスムーズに伝わり、希望する印刷物の完成に近づけるはずです。

体験をデザインする

杉田エースが取り扱う建築金物を掲載した「総合カタログ」。辞書のような“重さ”に着目したことで、「細マッチョ」をコンセプトに機能面のリニューアルを実現した。

そもそも論ですが、デザインとは表面的に形をつくったり …

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