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地域活性のプロが指南

共感とネットワークを広げる自治体広報の役割

大垣弥生(生駒市広報広聴課)

「自分が暮らす地域に関わりを持ちたい、推奨したい」市民のそんな意欲を高める取り組みを継続している奈良県生駒市。施策の結果、見えてきたこととは?

「生駒は大阪へのアクセスが良くて、自然も豊富で、安全で、子育て教育環境が整っている。新しくてきれいな住宅地もある。でも、それを守っていくだけでは不十分です。これからの社会を動かすのは、権力・カネ・組織ではなく、共感とネットワーク。アイデアを持った市民や自己実現の欲求を持った市民が集まって、社会を変えていきます。もちろん、この層はまだまだ多くありません。だからこそ行政は、そういった人々を横につなぐことや応援することが必要です」。これは、生駒市総合計画審議会の会長を務められている近畿大学の久隆浩先生から5年前に教わったまちづくりの考え方で、ずっと仕事の指針にしている言葉です。

シティプロモーションへの誤解

「シティプロモーション」は、言葉の持つイメージから「まちの売り込み」や「宣伝」だと誤解されることが少なくありません。行政が人口獲得を目指して宣伝をするなら、近隣市町村を上回る行政サービスの提供こそが必要だと思われる人もいるでしょう。もちろん、日常生活を支える制度や仕組みを整えることは大切です。しかし、分かりやすいお得なサービスは、競合が多く、心変わりされやすいものです。また、それだけでは「生駒で暮らし続けたい」というまちへの強い愛着は育まれず、持続可能なまちの未来にもつながりません。

「こうなれば自分も楽しいし、みんなが幸せになるかも」という地域に根差した小さなアイデアや希望を、共感とネットワークを活用して実現する人が増えていけば、それは確実にまちの資産となり、未来の変化につながっていくはずです。このため、生駒市のシティプロモーションは市民の皆さんの関係性の構築やエンパワーメントを高めることを何よりも大切にしています。

成果を可視化する測定

図 価値創造モデル(社会価値を生み出す設計図)

2023年8月~11月、生駒市は&PUBLIC(本社:神奈川県二宮町、共同代表:桑原憂貴氏・長友まさ美氏)と連携し、シティプロモーション施策が生み出した社会的価値を可視化する実証実験を実施しました。この実験には、シティプロモーションの第一人者である東海大学の河井孝仁先生にも参画してもらい、成果の分類や指標設定等でアドバイスをもらいました。

まず、シティプロモーション施策全体の成果は、河井先生が提唱される「修正NPS」で...

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