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地域活性のプロが指南

市民が連携するフェス開催 まちのイメージが向上する結果に

大垣弥生(生駒市広報広聴課)

居住意欲に密接にかかわる「まちのイメージの良さ」。奈良県生駒市のイメージ向上の取り組みを模索する中、筆者が手がかりとしたのは、市民が自ら魅力を発信する「いこまち宣伝部」での経験だった。

生駒山麓公園で2016年~2019年に開催したアウトドアイベント「IKOMA SUN FESTA」。市外の人には生駒を訪れるきっかけを提供し、市内で暮らす人にはまちの魅力に気づいてもらう機会をつくったことで、出店者や参加者が自らまちの魅力を発信。来場者アンケートで7~8割が「生駒のイメージが良くなった」と回答するイベントとなった。

あのまちに住みたい」「あのまちを訪れたい」「あのまちのものを買いたい」……と、人は都市を選択するときがあります。

その際、重要な要素の一つが、「都市イメージ」です。2021年度に、生駒市への転入者に「生駒市を選ぶ後押しになったもの」を調査したところ、1位の「家族・知人が住んでいる・住んでいた」(33.1%)に次ぐ要素は、「まちのイメージの良さ」(23.8%)でした。

続いて「住んでいた」(15.4%)、「不動産事業者の紹介」(14.8%)。「行政の取組・支援」は、わずか0.9%という結果で、別のアンケート結果からも居住意欲と強い相関関係があるのは「認知度」ではなく「都市イメージ」であることが分かっています。

まちのイメージを豊かに

シティプロモーションに取り組み始めたときから、「生駒市といえば、生駒山」といった単一の地域資源の想起にとどまる状態ではダメだと考えていました。

しかし、行政広報は、災害や新型コロナウイルス感染症のような非常時の情報以外は拡散性が乏しく、良好な都市イメージをつくることを苦手とします。

まちのイメージを豊かにし、「行ってみたい」「住んでみたい」という行動意向につなげていくための手がかりを掴むまでは、非常に時間がかかりました。

2016年の組織改編で、シティプロモーションは新設された「いこまの魅力創造課」が担当することになり、私はわずか4人の新しい課に異動になりました。

情報が集まる仕組みも市政記者クラブの皆さんとの接点もなくなり、広報紙やホームページといった広報媒体の担当からも外れ、何をすればいいか悩み続ける毎日でした。

一縷の希望は、前年度に立ち上げた市民PRチーム「いこまち宣伝部(以下、宣伝部)」の存在です。

宣伝部の皆さんが発信される情報は「楽しそう」「おいしそう」「面白そう」といった感情が動き、かたくて面白みの少ない行政の発信とは大きな違いでした。

愛をもって地域を語る人が増えれば、多様な地域資源が彩りをもって表出し、豊かな都市イメージの形成につながるかもしれないという仮説を立てました。

市民の発信で魅力が伝わる

2016年秋、都市イメージの向上を目指して企画したのが「IKOMA SUN FESTA」というアウトドアイベントです。

場所は、生駒のシンボル・生駒山。カフェやバー、レストラン、美容院、花屋、ワイン店……といった市内の人気店にマルシェコーナーを、市民活動団体や福祉団体、クラフト作家の方々にワークショップを担当してもらって、生駒の魅力的な人やモノやコトを可視化しました。

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