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記者の行動原理を読む広報術

災害時の広報体制 BCP(事業継続計画)とセットで再点検を

松林 薫(ジャーナリスト)

災害が発生した時、被害状況についての問い合わせに対応できるような情報収集体制ができているだろうか。被災地に人や物資を送る際も、行政と事前に連携しレピュテーションリスクを回避できているだろうか。能登半島地震で見えてきた、広報として対処しておくべきポイントを解説する。

2024年元日に発生した能登半島地震では、本稿の執筆時点で200人を超える死者・不明者が確認されており捜索が続いている。まずは被災者支援や地域の復旧・復興を急ぐべきだが、「次」の大地震も我々の対策や準備が整うまで待ってはくれない。直接の被害がなかった企業も、今回の地震で見えてきた新しい課題への対処を急ぐ必要がある。

地震後に浮彫りになった課題

能登半島地震の特徴は、地理的な悪条件が重なり被災地に向かうルートが寸断された点にある。自衛隊などが限られた道路を有効に使えるよう、自治体などが交通規制を実施。市民の間でもSNSなどを通じて、被災地入りを思いとどまるよう呼びかける動きが目立った。正月だったうえ、現地入りしたボランティアやジャーナリストが少なかったこともあり情報発信が従来の震災と比べ遅れた面がある。

被災者側からのSNSを通じた発信も限定的だった。スマホやSNSを使い慣れていない高齢者が多い地域だったことに加え、初期段階で詐欺とみられる投稿やデマが流れて炎上したことで発信をためらった人が多かったのかもしれない。

今回の被害規模は東日本大震災や阪神・淡路大震災などと比べれば規模は小さく、金沢市など近隣の都市機能も失われなかった。道路網の寸断さえなければ、もっと早い段階で各地の被害状況が伝えられ、手厚い救助や支援に繋がったはずだ。今後、同じように現地情報が手に入りにくい状況下で自社の施設や従業員が被災した時、現行の危機管理体制が機能するのか再点検する必要があるだろう。

図 能登半島地震後の点検項目例

被災直後の情報収集

広報上の検証ポイントは2つある。一つは、初期段階で施設や従業員の被害状況を把握する体制が整っているかどうかだ。報道機関の取材は災害発生後しばらく、被害状況の把握が中心となる。例えばヘリなどの映像から崩壊したり炎上したりしている工場やビルが確認できれば、企業に状況を問い合わせることがある。地元経済を左右する規模の企業や工場であれば、外観に被害がなくても影響を取材するだろう。

問い合わせがあった際に十分な情報が提供できれば、報道を通じて...

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