企業がサイトなどで発信する採用情報は、Z世代の学生特有の特徴を踏まえたものになっているか。大学で就職支援も行う筆者はそう問いかける。入社後のサポート体制のような学生ニーズに応じた情報は、メディアも関心を持つ内容となる。
来年度の新卒採用が本格化しつつある時期となった。少子化による新卒減少に加え、コロナ禍の反動もあり採用難に悩む企業も多いだろう。筆者は大学で就職支援にも関わっているので、今回は採用情報の発信とメディア対策について考えてみたい。
学力が二極化している
現在の大学生は1990年代半ばから2010年代初めに生まれた「Z世代」にあたる。この世代の特徴はタイムパフォーマンス(タイパ)の重視だと言われるが、筆者自身はあまりピンとこない。自分たちの世代とそれほど変わらないと感じるからだ。
大学でZ世代と接していて最も違いを感じるのは学力の二極化だ。旧帝国大学や早慶といったトップ層の学生とそれ以外で大きな断層がある。
実は古巣の日本経済新聞社にいたころ、新卒で入ってくる若手がどんどん優秀になっているという印象を持っていた。トップ層の大学の先生からも同じ感想を聞くことが多く、悪名高い「ゆとり教育」も実は成功しているのではないかと疑っていた。
実態に気づいたのは中堅大学の学生と接するようになってからだ。大学の偏差値から想像する学力レベルに比べ、実際の知識が乏しいのである。少子化により必死で受験勉強をする必要がなくなったことに加え、生徒の自主性を尊重する教育が浸透した結果だろう。
主体的に学ぶ習慣を持つ子供は情報機器を活用し、幅広い知識や自分で考える力を身につけていく。詰め込み教育がなくなって創造力も高まった。半面、大半を占める「普通の子」は試験による強制力がなくなって学習しなくなる。大学入学時には、両者の差は埋めがたいほど広がってしまう。結果的に、ゆとり教育や総合学習は一握りのエリートだけを伸ばす形になっている。
そうした教育制度の是非はともかく、企業としてはこの現実を踏まえて学生向け広報に取り組まなければならない。ところが、大学の現場から見ると企業が発信している採用情報は、時代の変化に対応できていないように見える。
学生の特徴をおさえた広報を
筆者の見るところ、現在の一般的な大学生は1.情報収集力が低い 2.抽象的な思考が苦手 3.企業観・労働観がネガティブ̶という特徴がある。
1は意外に思うかもしれないが、多くの教員が感じている事実だ...