社史や理念、事業の意義を見直す機会となる周年をどのように迎えるか。長寿企業から学びます。
2022年9月1日、ヨコオが創業100周年を迎えた。周年を機に理念体系を刷新し、同社にとって初となるブランドスローガン「幸せを、進化させる。」を制定した。

スローガンに合わせて「『』を、進化させる。」という切り口で構成したブランドブック。
これらは、経営陣が全員参加で討議を重ねてつくり上げたもの。それを取り仕切った事務局の中心人物が、広報・株式部の松本英之氏だ。従来のビジョンとミッションは、2008年のリーマンショック後に、落ち込んだ社内の機運を盛り上げていくために社内公募したものなので、やや内向きな側面があったという。「そこで、『挑戦とイノベーションを続けてきた100年の歴史と、これからも挑戦し続け、社会に貢献していく姿勢を社会に表明し、存在価値を高めていく必要があるのでは』と提案しました」。
社員皆で100周年を推進すべく、2020年9月からウェブ社内報「The Yokowo Times」を開始。周年事業はもちろん、各部署の取り組みや社員が評価されたニュースなどを共有すると、「会社のことを知る機会が増えた」「楽しみにしている」という声が寄せられた。「配信は周年事業を終えた現在も継続しています。部下が増え、配信頻度を週1回から2回に増やしました」(松本氏)。

週1回だったウェブ社内報の更新頻度は、現在週2回に増加。毎週火・木の更新を楽しみにしている社員も多い。
新しい理念体系を全社員に展開する前に、まずは2021年9月からは同社の未来を担う若手キーパーソンを中心とした「浸透セッション」を4回開催。人選は、「新たな理念を、自分の言葉で部下に浸透できる人」を各事業部と本部の役員に一任し、アメリカ、中国、マレーシアなど多国籍の人材を含む43人が参加した。「『人と技術で、いい会社をつくり、いい社会につなげる。』というパーパスなどを言葉だけで発表するのではなく、新たな理念を未来の在り方として理解してもらう場が必要だと考えました。事業部や本部といった垣根を越えたメンバーが一堂に会して、未来についてディスカッションできる場は貴重なので、参加者からも好評でした」と松本氏は話す。

コロナ禍のためオンラインとオフラインを使い分けながら10人ごとのグループで4回に分けて開催した「浸透セッション」。
ゴールは企業風土を変えること
100周年当日には、記念サイトのほか、ブランドムービーやブランドブックを公開。松本さんはこうした一連の取り組みを「日々の行動が変わり、会社が…