社史や理念、事業の意義を見直す機会となる周年をどのように迎えるか。長寿企業から学びます。
おもてなしに特化した社交の殿堂として独自のスタイルを確立してきた東京會舘が、2022年11月1日に創業100周年を迎えた。
100周年のコピーは「これからもあなたとつくる東京會舘」。人生のストーリーに寄り添う特別な場所であり続けたいという思いを表現したコピーは、社員投票で決定。社内公募で集まった256案のなかで圧倒的な支持を集めたという。
訪れる人のための施策を展開
2021年11月1日から2022年12月31日までの周年期間に実施した施策は東京會舘の「ストーリー」に軸を置き、クローズドな形で展開。100周年記念号として作成したタブロイド紙もDM発送などはせず、あえて訪れた人だけが手に取れる仕組みで配布した。
「既存のお客さまのロイヤルティを高めるとともに、東京會舘が積み重ねてきたストーリーに興味を持ってくださる方に向けて、一つひとつのプロダクトに込められた価値を感じていただけるよう意識しました」と語るのは、創業100周年記念事業実行委員会を率いた本舘副総支配人兼宴会支配人の山本健嗣氏。

創業100周年記念事業実行委員会の責任者として施策を手がけた山本氏。
その思いを体現したのが、2022年11月に実施した「創業100周年記念復刻フェア」だ。三島由紀夫が愛した「ソールピラフ」や、1970~1980年頃のデザートなどを当時のまま復刻。なかでも1975年に催された「エリザベス二世女王陛下、エディンバラ公フィリップ殿下歓迎午餐会」で提供されたコース料理の復刻は大きな話題を呼んだ。


盛り付けや添えられる野菜などは当時の写真(上)をもとに再現。メニューの一部は伝統メニューとして現在も提供していることが後押しとなった。
「9月8日にエリザベス崩御の一報が世界中に伝えられた直後から、『女王陛下と同じメニューを味わいたい』というお声を多くいただくようになりました。このタイミングで提供することへの戸惑いもありましたが、非常に多くのお声に後押しされる形で、急遽フェアに加えることを決めました」(山本氏)。
宴席では今も当時のレシピで提供し続けている「牛フィレ肉のフォワ・グラ詰めパイ包み焼き プリンスアルベール風」を含むスープからデザートのコース、さらに卓上メニューのデザインまでも再現。5日間の会期はすべて満席、130食を提供し、好評を博したという。
また、1階ロビーでは10月31日から12月11日まで記念展示を実施。「料理・沿革」「建物」「国賓・公賓」という3テーマから東京會舘の歴史を紹介する構成で、これまでに迎えた100人以上の国公賓の写真や使用した食器・メニュー、貴重な資料などを展示したほか、幅3.6メートルものフォトスポットも設置した。

歴代の本舘建物の写真も交えて構成されたロビー展示。...