ブランドの教科書どおり実践してもブランドがつくれない─。そんな壁に直面したダイキン工業の片山義丈氏がたどり着いた、ブランド論の本当の意味や、実務家としてブランドをつくる方法論とは。
空調機器の売上高グローバルNo.1メーカーであるダイキン工業。同社で広告宣伝、広報、ウェブサイトを横断し、企業・商品のブランドづくりを行うのが、広告宣伝グループ長の片山義丈氏だ。長年ブランドづくりに携わっている片山氏だが「いろんなセミナーに通い、ブランド論の本を読んでも、約25年はうまくブランドをつくることができなかった」と振り返る。「ブランドの『土台』が分かっていなかったので、いくらブランドをつくるための情報発信をしてもうまくいかなかったのです」。
片山氏はこうした経験をもとに『実務家ブランド論』(宣伝会議)を上梓。この内容を踏まえ、企業ブランドの構築や情報発信の前に固めておくべき「ブランドの土台づくり」について講演した。
間違ったブランドづくり
では「ブランドの土台づくり」とは何なのか。片山氏は次の3つを挙げた。
❶ブランドづくりの「目的」を間違えない
❷「ブランドとは何か」を理解して、しっかり定義する
❸自分たちがどんなブランドをつくりたいかを決める
「組織内で“今私たちに足りないのはブランド力だ”といった議論が起きると、ロゴマークを新しくし、ブランドスローガンをつくり直し、イメージの広告を打つ、という話になりがちです。しかし目的があいまいなまま、ブランドづくりに取り組んでもうまくいきません。ブランドをつくるとどんないいことがあるのか、何のためにやっているのか、土台となる部分に目を向ける必要があります」。

ダイキン工業のコミュニケーションワードは「空気で答えを出す会社」。このワードに落とし込むまでには、❶ブランドづくりの「目的」を定め、❷「ブランドとは何か」を理解し、❸自分たちがどんなブランドをつくりたいかを決める、というブランドの土台づくりが必要だった。
ブランドづくりの目的
土台づくりの1つ目となる「ブランドづくりの目的」。それは、儲かることだと片山氏は言う。言い換えると「商品・サービスが売れる」ため、そして「企業の事業活動に貢献する(投資家が株を購入する、共創先企業や優秀な人材が増えるなど)」ために、ブランドづくりがある、ということになる。
「例えばブランドづくりのための広告は“売るためではなくおしゃれなイメージの広告”だと捉えていると、ブランドづくりの目的から外れてしまいます。ブランドスローガンや広告をつくっているうちに、いつの間にか『儲けるため』という軸からぶれてしまう、そんなことがないように、目的をしっかりと共有しておく必要があります」。
ブランドとは何か
土台づくりの...