プレスリリースをはじめとした広報ツールを制作する際、「デザインの正解が分からない」と悩んだことはないだろうか。「デザイン=オシャレ」というイメージのもと、自己流でなんとなく片付けてしまっている人は多いはず。その結果「分かりづらい」「しっくりこない」デザインに仕上がってしまう。
そこで本書では、デザインに着手する前にまず、目的から逆算して「ターゲット」と「伝えたいこと・書くこと」を決めるのが重要だと述べている。そして実際にデザインをつくるときに、守るべき最低限の3ルールも指南する。
これを知れば、デザイナーが本業ではない“ノンデザイナー”でも、的確なデザインができるようになり、ディレクションのポイントも抑えられるだろう。
機能するデザインの3ルール
「そもそも、デザインに何ができるのかを知らない方も多いと思います。前提として押さえるべきデザインの役割は『伝えたいことが短時間で伝わること』。つまり、『読む』ではなく『見る』だけで伝わることです。ノンデザイナーが最初に目指すべきデザインは、オシャレかどうかよりも、この点に尽きるでしょう」。
そして、この役割を果たすために、守るべき3つのルールがある。それは、最も伝えたいことに気づいてもらうために「メリハリをつける」、要点を伝えるために「文章をできるだけ短くする」、見やすくするために「色を使いすぎない」。
たったこれだけだ。しかし頭で分かっていても、手を動かすときにはどうしても、「あれもこれも伝えたい」と読み手視点が抜け落ちやすいので要注意。デザインにおいて大切なスタンスとは、情報を盛り込むのではなく、取捨選択を繰り返して情報を捨てることだ。
本書では、広報担当者に身近なプレスリリース・チラシを中心に、動画のサムネイルやSNS広告など幅広い制作物の具体例を挙げながら、ビフォーアフター形式で良い例と悪い例を解説。
著者が講師を務める講座内の恒例企画「デザインお直しクリニック」を紙面で再現し、ノンデザイナーでも改善ポイントが明確に理解できる形式に。デザインの知見を持たない初心者にとっても、読むだけで再現性のあるデザイン思考を身につけられるだろう。
媒体別のデザインポイント
ここでは「プレスリリース」と「チラシ」の事例から、媒体の特性を踏まえながら、デザインのポイントを紐解いてみる。プレスリリースにおけるデザインの役割は、ターゲットである記者に「数多あるプレスリリースの中から目をとめてもらうこと」。
シンプルなデザインよりも、インパクト重視の目立つものが適している。例えば、「情報の種類でレイアウトを分ける」「要点は色や太さを変える」「写真サイズを大きくする」「タイトルで魅力を伝える」など。目にとまってから、斜め読みでも伝わる構成がよい。
一方、チラシは前提情報がなく読み手との最初の接点となることが多いため、何よりも安心感・信頼感の醸成を重視すべきだ。
「知らないことは不安」という人間の心理を踏まえ、「フォントは安定感のあるゴシック体」「配色はハッキリ明るく」「文字列にラベルをつける」など手抜きと思われないよう“折り目正しさ”を出すのが最適だ。
デザインが「正解」かどうかを主観で捉える思考を捨て、常に読み手視点で「早く伝わるか」を考えることが重要といえる。本書を通じて自分の思考回路をデザインしてみよう。