企業の存在意義を示すパーパスやビジョンが重視されるようになった近年。広報担当者には、企業イメージの向上施策とともに、企業イメージを把握するための社会調査も求められるようになってきている。
不安定で不確実性の高い現代、パーパスやビジョンを通じてステークホルダーの共感と信頼を獲得することが、企業の持続的成長に欠かせなくなってきている。各企業は「ステークホルダーからどのように見られているか」をこれまで以上に意識する必要があり、企業イメージやビジョンの浸透度を測るコーポレート調査も効果的といわれている。しかし広報担当者の中には、これまで調査業務を行ってこなかったために、知見が十分ではないケースも多い。そこで広報担当者が調査を行うにあたり、押さえておくべき基本的なポイントを見ていこう。
全てを解き明かせない意識を
「社会調査において最も重要なのは、ある種のネガティブ・ケイパビリティ。つまり安易な調査結果に性急に飛びつかず、まずは『社会調査では全てを解き明かすことはできない』と理解することです」と説くのは、社会構想大学院大学 専任講師の橋本純次氏。
「社会調査は、その時点における単一の正解を探究する自然科学の実験と違い、あくまで『ある文脈の中で最も確からしいもの』を言語化することが目的です」。ここでは、この結果を分析すれば確実にこれが分かる、といった定理は存在しない。ケースバイケースでしかないため、自社が置かれている環境や状況を鑑みながら、調査をアレンジしていく必要があるのだという。
この前提をもとに、調査を設計するのに重要なことは何か。「ひとつは、都合のよいストーリーを語るための調査を行わないことです。ストーリーありきの方が当然、調査項目をつくりやすく、効率性も高いです。しかし...