「大学広報ゼミナール」の私の連載は、本稿で最終回となります。毎月、苦悶しながら原稿に向き合う時間は永遠にも思えましたが、振り返ればあっという間だった気もします。最終回では、日常業務において意識してきた大学広報担当者としての心構えを数点まとめ、後進となる読者の皆さまへ“タスキ”を渡したいと思います。
「いい!」と感じたまま叫ぶ
はじめに、改めてお伝えしたいのは、大学に限らず「広報は素敵な仕事」ということです。自身が感じた「これはいい!」を、気持ちそのまま(整えたり磨いたりすることは時に必要ですが)で「これはいいですよー!」と様々なチャネルで叫ぶことが自らの仕事となり、そのほとんどの場合で、関係した教職員や学生からありがとうと言っていただける。
筆者は飛び込み営業からキャリアを始め、様々な仕事を様々な立場で経験してきましたが、これほど心が豊かになる仕事はなかなか無いと感じています。一つひとつは地道で泥臭い作業が多く、時にクライシス対応など心的負担の多い局面もありますが、広報という仕事に関われる今をまたとない機会と捉え、アイデアを重ねて精一杯チャレンジしてほしいと思います。
「大学広報」の広大な守備範囲
2つめに、大学において「広報」という2文字が示す仕事の守備範囲は、民間企業(以下、「民間」)と比べて非常に広くて曖昧です。筆者と同じように民間から大学職員に転じた方は(間もない方は特に)ぜひ、「広報」という2文字が意味する守備範囲の違いを意識して仕事に臨んでみてください。
報道発表やメディアリレーション、インターナルブランディングなど民間でも広報担当部局が扱う業務はもちろん、「広告宣伝」や「販促」(志願者募集や産学官連携促進)、「お客さま相談」(クレームなどを含む公聴機能など)や「IT・デジタルマーケティング」(ウェブサイトやSNS運用)など、民間では業務領域の観念も担当部局も細分化されているものが、大学ではすべてひっくるめて「広報っぽい仕事」と括られがちです。領域や目的が違えばコミュニケーションを取る対象もアクション方法も違います。
よって大学においては、「広報の相談で」と学内相談をもちかけられた際に、相手がどの領域(目的)の「広報」を求めているかを掴み、その上で計画することが重要です。
さらに、広報が期待される領域は...