近年実施する企業が増えてきた「従業員エンゲージメント調査」。実施するだけではなく次なる打ち手を考えていくためにはどうするべきなのか。調査から見えてきた結果を社員にどう開示し広報していくべきなのかについて組織開発の観点から解説する。
現在、コロナ禍で従業員エンゲージメントへの注目が高まっている。リモートワーク常態化やパーパスへの注目が集まる中、広報担当者はどのような施策を行えばいいのか日々頭を悩ませている。そのような背景から実施する企業が増えてきた従業員エンゲージメント調査。
しかし、「実施したはいいものの、この結果はどう開示していけばいいのか」「本来の目的であるエンゲージメント向上にどうしたらつながるのか」といった声も同時によく聞くように。そんな中注目されているのがエンゲージメント調査を報告して改善につなげる「サーベイフィードバック」という手法だ。
「時間を割いて回答してもらっている分、『会社は何かを変えようとしてくれている』『自分たちの声を聴こうとしてくれている』といった期待をされるのは当たり前のこと。そこでその後の反応がないと、答えている当事者としてはがっかりしてしまいます。調査を行った後にしっかりフィードバックして改善につなげていくことが大切です」。そう語るのは人事コンサルタント会社 壺中天代表取締役の坪谷邦生氏だ。
調査だけでは意味がない
「まず、なぜこの調査を行ったのか、目的を広報することが非常に大切です。実施に至るまでに『この調査をやろう!』と言い出した人が絶対にいるはず。その人に直接話を聞いて、目的と熱意をきちんと広報することができれば、回答率はもちろん回答の質も向上します」。調査を行っている目的と、会社がその結果をどう受け止めたのかをフィードバックする必要があるという。
また、悪い結果の時に意見を発表しないと、結果的に不信感を煽ることになってしまう。「さらにそこから、今後の会社全体としての方向性や、実際どのような施策に落とし込んでいくのかを伝えることができればより良いですね」。
坪谷氏によると、あくまでもエンゲージメント調査は“レントゲン写真”。「調査を行っただけでは、ぼんやりと『あの部署が怪しい雰囲気だな』といった会社の問題点や課題点が影のように浮かび上がってくるだけ。去年と比べて数値が下がっていたり、他と比べて数値が落ち込んでいたりするなら『今年は去年と比べてあまりよくなかったんですけど⋯何かあったんですか?』と直接聞きに行けばいい。そうすることで、やっと会社内の現状を知ることができます」。
数値を出すことに満足するのではなく、その先にどのような対話の機会を設けるのか。正しく社内の状況を...