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炎上リスクの傾向と対策

SNSがアピールの最前線に 活用は全方位での対策を急げ

鶴野充茂(社会構想大学院大学 客員教授/ビーンスター)

2022年2月にはじまったウクライナ侵攻から、世界は物価高騰など大きな影響を受けるとともに、情報流通の面ではSNSの役割が大きく注目されるようになった。情報のさらなる慎重な取り扱いが求められるいま、組織としてSNSをどのように位置づけるのか、改めて考える機会にしたい。

イラスト/たむらかずみ

ウクライナのゼレンスキー大統領は、2月26日に「ゼレンスキー大統領が国外逃亡した」というデマに対して、自身がウクライナでカメラを回し、「私はここにいる。我々は武器を置かない」といった内容の動画を投稿した。

ロシアがウクライナへの侵攻を始めた当初、ウクライナの首都キーウは1週間程度で陥落するのではないかと報じられていた。それほどまでに圧倒的な兵力の差があり、攻撃は短期間のうちに終了するだろうと見る人たちが多かった。しかし、戦争は長期化し、今なお終結の見通しは立たない。そして最近では、ロシアが一方的に併合を宣言した支配地域をウクライナが奪還する例も報じられはじめた。

これを可能にしたのは、米欧など世界からの大きな支援の成果だが、そのきっかけをつくったのは、ウクライナ ゼレンスキー大統領の強力な情報発信によるところが大きい。

偽情報を打ち消す投稿

ゼレンスキー大統領は、2月24日のロシアによるウクライナ攻撃開始後、国内外に向けて情報を発信し続けている。世界的にも大きな注目を集めたのは、「既に国外に逃れた」などという情報が飛び交う中、SNSに投稿した動画だ。夜のキーウ中心街と見られる場所で政府高官とともに「私たちはここにいる、独立を守る」と国民に向けて訴えかける映像だった。

ゼレンスキー大統領がウクライナから逃亡したという噂はその後も繰り返し飛び交っている。彼はそれを打ち消すかのように頻繁に大統領府や市内のあちこちで動画を撮影するなどして、複数のSNSアカウントから毎日のように投稿し続けている。もちろん、SNSだけでなく各国議会や国際会議でのリモート演説、各国首脳のウクライナ訪問を迎え入れての直接対談もしているが、直接リアルタイムで世界に届けられる投稿のアピール力は大きい。11月初旬段階でTwitterアカウントのフォロワー数は約690万人に達している。

Twitterをやめたリーダーたち

世の注目を集めつつ、最終的にSNSアカウントを手放したリーダーたちもいる。2021年12月にTwitterを始めた兵庫県明石市の泉房穂市長は、率直な物言いと人柄あふれる日常の投稿など硬軟おり混ぜた投稿で急速にフォロワーを増やした。

中でも子育て支援策などについて積極的に発信してきており、10月に岸田首相が自身の長男を首相秘書官に起用した際には、「『子どもを大切にしてほしい』と岸田総理に何度もお願いをしてきた。『決断と実行を』と強く迫りもした。その結果がこれ。岸田総理は『政治経験も行政経験もない31歳の長男を要職の政務秘書官にすること』を決断し実行した」(原文ママ)と批判し、8万件以上のいいねがついた。

一方で、投稿によって周囲から批判を巻き起こす事態が何度も起きており、ツイート自体がニュースになることも多かった。2022年2月には川崎重工業への課税額が載った書面画像の投稿が問題視され、後に削除した。泉市長は「目的の公益性」などを挙げて同社との面談内容を伝えることが市民の知る権利に寄与するなどと主張したが、市議会はこれを、地方税法で禁じる「秘密の漏えいに当たる疑いが強い」とした。

10月16日、そんな市長はTwitter更新を止めた。市内の式典において市議に向けて暴言を吐いたことで、来春の任期満了で政治家を引退するというのが理由だった。

同じく兵庫県の久元喜造神戸市長は、4月にTwitterを、8月にFacebookの活用を止めた。9年近く活用してきたというTwitterのアカウントを閉鎖する際には、事実無根の書き込みに悩んできたとして「もう限界です」とつぶやいていた。

自らの発言で炎上し、それが引き金となって更新を止めたのが、飲食チェーン焼肉ライクを経営する有村壮央社長だ。有村氏は10月26日、「『焼肉ライク行くよりスーパーで買った肉を家のフライパンで焼いた方が安いんだよな⋯』というつぶやきがイラッとしました笑」(原文ママ)などと書いたツイートが拡散され、批判が集まった。翌日「僕は毎日エゴサしているので色々な意見があるのは理解しているし生かす事はあってもイラッとはしない。ツイートをちょっと目を引くようにしてしまった」(原文ママ)と投稿し、さらに新たな批判を招いた。

その翌日、有村氏は「ツイッターをやめることにしました。10年以上、唯一の趣味がツイッターでした。いつかこんな日が来ると思っていました」(原文ママ)との言葉を...

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