多くの人の生活を支えるインフラサービス。だが、その分障害発生時に影響を与える範囲が多いのも事実。そのような場合の利用者への周知・広報はどのようにしていけばいいのか。SNSはじめオウンドメディアの活用についても解説する。
2022年は、社会インフラを支えるサービスの障害が大きく取り上げられることが多かったように思う。インフラサービスにおいて大規模な障害が発生すると、利用者数の多さや影響範囲の広さゆえに、世間から多くのネガティブな反応が寄せられがちだが、さらに企業側が利用者への周知・広報対応を誤ってしまうと、事後対応のマズさが「炎上」に直結してしまう。
過去の事案などを見ていても、サービスの不具合発生自体よりも、不具合発生に関する情報周知が遅れたことに対して、「もっと早く不具合について知らせてくれれば、いくらでも他の手段が取れたのに!」という批判や怒りの声が大きくなるように見受けられる。こうした「炎上」を回避し、早期に事態を沈静化させるためには、どのような点に留意する必要があるのか。
「情報の飢餓状態」を回避
一般的に、不祥事が発生・発覚した際の危機管理広報では、多少の正確性を犠牲にしても迅速な情報発信を優先するか、逆に正確性のために事実確認などに十分な時間を掛けるべきかという悩みに直面することがよくある。この問いに対する唯一の正解はなくケースバイケースの対応が求められるが、ことインフラサービスにおける大規模障害の場合には、迅速性を優先した対応が正解となることが多いだろう。
人は、何らかの混乱を前にして、何の情報も与えられず、先の見通しを立てられない状態に追いやられると、非常に大きなストレスを感じる。やがて、そのストレスは、他者のミスに対する不寛容な態度や攻撃的な言動として発現してしまう。こうした事態を避けるためには、まず企業として、障害に直面したユーザーを「情報の飢餓状態」に陥らせないことが重要である。
サービスに何らかの不具合が生じていると認識した利用者は、まずその不具合が自分にだけ起きている現象なのか、不特定多数に生じているものなのかの把握を試みる。そして、他の多くのユーザーにも同時に不具合が生じている、自分だけに不具合が生じているわけではないと分かると、(本当はそれだけ大規模で深刻な障害である可能性が高まったと言えるにもかかわらず)どこか安心したという経験はないだろうか。
自社サービスの大規模障害を検知した場合、企業としては、まずは企業の公式情報であることが分かる形で、大規模な障害が発生している旨を速報することが重要。それによって、ユーザーに対して、「今あなたの直面している不具合はあなただけが困っている問題ではないんですよ」と、ある種の安心感を与えることにも繋がる。
また、SNS上で不確かな情報が拡散されてしまうと、混乱に拍車が掛かってしまうため、「公式情報であると分かる形」で情報を発信することも大事なポイント。ホームページトップの見やすい箇所に「サービス障害についてのお知らせ」を掲載するのが最低限の対応だが、SNS上での拡散力という観点からは、一目で「公式」と分かる企業アカウント*1を通じて情報を発信できるとより効果的。公式アカウントを有していない場合には、メディアに対して状況を説明し、不具合の発生について報道してもらうことも考える必要がある。
*1 企業の広報担当者として、企業の公式SNSアカウントを作成しておき、そのフォロワーを増やして情報の拡散力を高めるとともに、運営するSNSのアカウントが公式アカウントであることの認証を得られるよう努めておくことが、平時の対策としても有効となる。