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実践!プレスリリース道場

周年事業の体験企画を伝える、サンクリエーションのニュースレター

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出する企業や商品リリースについて、PRコンサルタントの井上岳久が配信元企業に直接取材。背景にある広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを、じっくり分析・解説します。

今回は、プレスリリースよりも多いボリュームでまとまった情報を伝える「ニュースレター」のつくり方を学びます。業界のトレンドや、多岐にわたる部門を持つ企業など、幅広い情報をまとめて送るニュースレターは資料的価値の大きさが特徴です。今回は「こういう使い方もあるのか」という好例を紹介したいと思います。

サンクリエーションは和歌山県に根差し、注文住宅やリフォームなどを中心に請け負う工務店です。同社では、2021年8月から2022年5月にかけて、小学生に家づくりの作業を体験してもらう「きっず工務店」というプロジェクトを企画しました。

きっかけは2022年に創業30周年を迎えるにあたり記念事業を行いたいと考えたこと。和歌山支店長と広報メンバーが話し合う中で、現場で職人の高齢化が進み、若者のなり手がないことが話題にあがりました。そこで、小学生のうちに家づくりの楽しさを経験し、将来は建築の仕事に携わってもらおうと企画がまとまりました。夏祭りなどの行事がコロナで軒並み中止となり、子どもたちが楽しめる企画にしたいという思いもありました。

参加者は県内の小学1〜5年生15人で、毎月1回、保護者同伴で建築現場に集合。些少の参加費はかかりますが、現場で使うヘルメットなどの道具一式はプレゼントされます。また「日当」としてお菓子が支給されるなど、楽しみながら参加できる仕組みです。

建築する物件は同社の分譲地で建て売りをする木造平屋建ての一軒家。8月に開催した入社式で名刺をプレゼントし、全員で鍬入れと地鎮祭を経験するところから始まりました。こうした建築にまつわる儀式は大人でも知らない人が多く、子どもたちにはいい経験になることでしょう。9月の土工事では一輪車での土運びやトンボでの地ならし、10月の鉄筋工事では鉄筋を針金で固定する仕事をしたり、のこぎりや金づちを使った椅子づくりに挑戦したりしました。

司会進行は企画広報室室長の山本将輝さんが担当し、社員が現場監督を務め、指導はそれぞれ専門の職人たちに依頼しました。子ども相手の作業に向いていそうな職人を選び、参加者がケガなどをしないよう細心の注意を払いながら進めたといいます。

作業には防蟻剤の塗布や断熱材の充填、外壁の吹付塗装やフローリング貼りなど、器用さが問われる内容も含まれます。もともと物づくりが好きな子どもたちが集まっていたせいか、家で自主練する子もいたそうで、「それぞれ繊細さが必要な作業を上手にこなしていました。回を追うごとに自主性が出てきて、すべて言わなくてもスムースに動けるようになったり、職人さんや私たち社員と気軽に話せるようになっていったりと、その成長は目覚ましいものがありました。写真を見比べると顔つきが変わっているのがわかります」と山本さん。

見やすさ・分かりやすさを重視

ニュースレターでは、8月の第1回から各回の様子をダイジェストで紹介。5月の最終回で竣工式をする前の段階でメディアに配信しました。ここからはその内容を見ていきましょう。

(ポイント1)ニュースレターの場合、リリースと大きく異なるのは1枚目に目次と概要を入れることです。ニュースレターは10枚を超えることも多いため、概要を入れて目次で全体の流れを把握させることが必要です。これがないと読み手に敬遠されてしまいます。3ページ目で建築業界が抱える職人不足の実情をグラフつきで説明しており、納得感も...

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