人材の多様性を活かし、誰もが力を発揮できる組織を実現する。そのためには、広報パーソンが、D&Iの議論に向き合い、理解を深めていくことが第一歩となります。
D&I(Diversity & Inclusion)またはDEI(Diversity, Equity & Inclusion)*1という言葉が、ビジネスにおいても広く定着するようになりました。一方で、いまだにダイバーシティは女性活躍だけを指すといった誤解はありますし、「我が社におけるインクルージョンとはどのような状態か」について具体的なビジョンがないケースも多いかもしれません。
*1 後述するように「人権の保障」がD&Iの基礎であることから、D&Iの目的には当然のことながら、公平性(Equity)の実現も含まれます。またこのことは、次回で詳説する「経営倫理」の観点(水谷雅一教授の「経営価値四原理システム」:企業の利潤追求の過程において、人権を含めた人間性や社会性をも対等の価値として実現することが真の経営である)から導き出されるものです。よって本連載では、DEIではなくD&Iと表記します。
私自身は左足に障害のある当事者であり、その視点を活かしながら研究を行っています。その立場から見ると、障害の有無に関係なく働ける先進企業がある一方で、障害者がD&Iの議論から取り残される状況が続いています。なぜなのでしょうか?そして誰も排除されない「真のD&I」を実現するためには、どうすればいいのでしょうか。
ダイバーシティの分類
まずダイバーシティとは「多様性」のことです。人には性別、年齢、国籍、人種、民族などの違いや障害の有無、性的指向・性自認、そして性格、価値観、考え方、慣習や宗教など様々な違いがあります。