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記者の行動原理を読む広報術

経験豊富なシニア記者が地方で現場に 若手と異なる彼らへのアプローチの仕方を学ぼう

松林 薫(ジャーナリスト 社会情報大学院大学 客員教授)

新聞業界の人材不足はさらに深刻化。その対策として今、編集委員などと同じ年齢層のシニア記者らが再び地方に赴任して第一線で働く動きが進んでいるという。若手記者とは異なり、経験豊富な彼らの食指が動くようにするにはどうしたらよいか。

2021年のマスコミ業界を振り返ると、長引くコロナ禍の影響で経営難が加速してしまった観がある。新聞業界を例にとれば、毎日新聞が1月に税制上「中小企業扱い」となる1億円への減資を決定。朝日新聞の2021年3月期連結決算も11年ぶりの最終赤字になった。業界全体で発行部数の減少が進んでおり、底を打つ兆しもない。こうした中、各社ともリストラを進めており、現場の記者はどんどん少なく、かつ忙しくなっている。広報としては記者にどうネタを売り込んでいくか、思案のしどころだろう。

新聞記者のキャリアパス

実際、知り合いの広報担当者と話すと「記者クラブにいる記者が減った」というぼやきを聞くことが多い。関西など首都圏以外では、特にその傾向が顕著だ。もともと全国紙の多くは、新卒で入った記者を「ドサ回り」などと称し、まず地方の支局で修行させてきた。しかし、採用人数を絞り込んでいるので、全国に手厚く配置できるほどの人員はもはやいない。このため地方拠点の統廃合が加速しており、中には「実質的に全国紙であることを諦めたのではないか」とささやかれる社もあるほどだ。

そうした事情を背景に存在感を高めているのがシニア記者だ。新聞社では、若手が減る一方で、今より景気の良かった時代に採用した中高年の記者がたくさん残っている。こうしたベテラン勢を、地方を含めた「現場」に戻し、人手不足を補う動きが広がっているのだ。

新聞記者のキャリアパスについて簡単に説明しておこう。新人や若手などのヒラ記者は、業界内では「兵隊」と呼ばれる。やがて年次が上がるとサブキャップ、キャップとなって取材チームを率いるポジションに就く。その後はデスク(編集者)を経験した後、部長など管理職になるコースと、編集委員や論説委員など肩書き付きの記者になるコースに分かれるというのが一般的な流れだ。

後者の編集委員や論説委員は、記者といっても基本的に「抜いた・抜かれた」のスクープ合戦には加わらない。編集委員は自分の専門分野の解説記事やコラムを署名入りで書くのが主な仕事。一方、論説委員は社説を執筆するなどして、その新聞社の論調を先導していく。このため、記者は一定の年齢になるとプレスリリースや記者会見の処理(記事化)など、いわゆるストレートニュース(雑報)を書く仕事を卒業するのが通例だった。

シニア記者の若手との違い

ところが慢性的な経営難で、こうした体制は維持しにくくなっている。日本の新聞社は年功序列の日本型経営だからだ。編集委員や論説委員は、執筆する原稿の本数自体は少ない。言い換えれば...

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