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記者の行動原理を読む広報術

語り過ぎは炎上を盛り上げることも 真摯な反省の弁と実行が鎮静化の鍵

松林 薫(ジャーナリスト 社会情報大学院大学 客員教授)

五輪開幕まで、短期間で起きた相次ぐ関係者の辞任劇。「五輪」という平和の祭典でさえ炎上の火種になる。コロナもあいまって複雑な世の中だ。では企業が不祥事や炎上を起こしてしまった際の記者への対応策はどうあるべきか、筆者が語る。

7月に開幕した東京五輪・パラリンピックでは、大会関係者の辞任や解任が相次いだ。「女性蔑視」発言による森喜朗・組織委員会前会長の辞任に続き、過去のいじめをめぐる発言が問題視された小山田圭吾氏が開会式の音楽担当を辞任。ユダヤ人のホロコースト(大量虐殺)をコントのネタにした過去を批判された小林賢太郎氏もショーディレクターを解任された。

一連の辞任・解任劇で大きな役割を果たしたのがネット世論だ。著名人の過去を含む不適切な言動をSNS上で攻撃し、公的な場から追放する「キャンセルカルチャー」は、ここ数年、欧米で猛威を振るっている。それが五輪という国際イベントをきっかけに、日本にも本格的に上陸したと見た方がいいだろう。

筆者はこうした風潮について、言論に関わる人間のひとりとして危うい一面も感じている。ただ、メディアを舞台に仕事をする以上、現実として受け止めた上で適応していくしかない面もある。これは広報も同じだろう。ネット炎上を避ける方法については過去の連載で触れたので、今回は炎上を引き起こしてしまった際の事後対応について考えたい。

自己保身と見られる発言

一連の炎上騒動を振り返ると、本人謝罪後のネット世論は大きく異なっていた。例えば小林氏は即時解任という重い処分を受けたが、ネットではむしろ同情論が目立った。逆に、組織内では慰留されたとされる小山田氏については、本稿の執筆現在でも批判が収まらない。

もちろん、炎上のきっかけや本人の仕事内容が異なるため単純に比較はできない。ただ、人々が受ける印象の違いにつながったのは、発表した謝罪コメントにおける「言い訳の有無」と「反省を示す行動の有無」の2点だったのではないだろうか。

小山田氏のコメントを改めて読み返すと、反省や謝罪の言葉を含んでいるし、文面も丁寧だ。しかし、SNSでの反応を見ていると「誠意が伝わってこない」という声が多かった。おそらく、「記事の内容につきましては、発売前の原稿確認ができなかったこともあり、事実と異なる内容も多く記載されておりますが」といった部分に、自己保身の臭いを感じ取った人が多かったのだろう。

企業不祥事に関するリリースも含め、謝罪文にこうした「留保」が入っているケースは多い。小山田氏ほど露骨でなくても、「そうした意図がなかったとはいえ」「誤解を与えたとしたら」といったフレーズはよく見る。この手の釈明は本人が批判に納得していない印象を与え、受け手に心からの謝罪を疑わせる結果となる。

小山田氏のコメントでも、前段で「学生時代の...

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