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目指す「組織文化」を浸透させるには?

「内部通報制度」を定着させる 3つのステップとは?

森原憲司

「内部通報制度」を導入していても、「どうせ通報しても無駄」と思われていないだろうか。健全な経営の要となる制度を社内に浸透、定着させるための手法を確認していく。

内部通報制度とは

従業員からの内部通報を受け付け、通報者を保護しつつ適切な調査や是正、再発防止策を講じるための仕組み。不正の早期発見や未然防止につながる。2020年の公益通報者保護法の改正により、従業員が300人を超える事業者には、内部通報に適切に対応するための体制整備が義務付けられる。

「そもそも会社の企業風土が回復不能なほど悪化しているかどうかのメルクマールが、内部通報制度が生きているかどうかであると思われる。内部通報制度が最後の望みの綱なのであり、それがなくなった会社はもう改善の見込みはない」。これはスルガ銀行不正融資事件の第三者委員会による調査報告書の指摘だ。

不正が蔓延すると、社員の判断力は麻痺し、不正を異常と感じなくなる。客観的に見れば異常なのに(先の不正融資事件では、預金残高の改ざんが恒常化)それがノーマルとなり、不正の拡大生産が始まる。こうした事態に至った時、内部通報制度を利用することには大変な勇気がいる。不正がマジョリティとなっているからだ。

内部告発(メディアへの投書等)も選択肢として浮上するだろう。だが内部告発を契機とするメディアのキャンペーンや監督官庁の指導で不正が是正されても、当該企業に対する信頼は地に落ちている。自浄能力のない企業の商品・サービスを利用する者はいない。このような事態に陥るまでに内部通報制度が利用できれば良いが、先の銀行においては、10%弱の行員が内部通報制度の存在自体を知らなかった。では、どのように制度を機能させるか。

ステップ1 内部通報制度を周知する

金融庁からリリースされている「コンプライアンス・リスク管理に関する傾向と課題・令和元年6月(令和2年7月一部更新)」にて、内部通報制度に関する取組みとして「全職員が毎日目にするPCのスクリーンセーバーや出勤管理のページ等に各種内部通報に関する連絡先一覧を掲載し、内部通報制度の存在を周知徹底している」といった事例が紹介されている。図1の例も参照されたい。

図1 伊予銀行のコンプライアンスカード
筆者が内部通報制度の運用をサポートする伊予銀行では、コンプライアンスカードを配布している。「困ったなあ~?」「本当に、これでいいの⋯?」と実際にコンプライアンス違反に直面した際の素朴な感覚をイラスト入りで表現してある。「通報してください」といったワードではない。「通報してもいいのか」と社員の心を去来する感情に寄り添った表現になっている。

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