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社長の個性に合わせたIRシナリオづくり

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広子たちはIR担当として、忙しくも刺激的な日々を送っている。勉強会で出会った、新規上場企業でIR担当をするA子さん。社長がIR活動に関して積極的ではないらしく⋯⋯。



大森:さて、前回はIRにおける社長の役割を整理したけどその重要性は理解できたかな?A子さんの会社のように、積極的でない社長に対しては社長の個性と実績に合わせたシナリオづくりから始めよう。

A子:どのあたりから手を付けるべきでしょうか?

大森:まずはシナリオの前に、会社として伝えるべき主題をもう一度整理してみようか。A子さんのところもIPOの際のシナリオは総花的というか、会社の自己紹介がメインのようなものだっただろうから。

東堂:目的別に整理するということですか?会社説明会でも、決算説明会なのか、中長期戦略説明会なのか、または個人向けなのか、アナリスト向けかでも変わりますよね?

広子:それもあるけれど、新規公開企業という比較的注目されやすい立ち位置から、同業他社と比較される対象に変化していく中で、主張するテーマも変えていかないと。ここを見落とすと、あっという間に注目されないようになるからねえ⋯⋯。

A子:たくさん要素がありますね⋯⋯。

大森:ははは。でも、メインのシナリオをつくってさえいれば、題材や相手に応じてパーツを組みなおすだけだから、対応できると思うよ。

A子:分かりました、挑戦してみます。そのメインシナリオですが、どう考えればいいでしょう?

大森:そうだね、基本的には、「伝えたい主題」は、会社の中長期的な成長ストーリーを題材として、設定するところからかな。

広子:待ってください。似た言葉が続いて、混乱してきました。

大森:ごめんごめん(笑)。例えば、主題は「当社は独自のビッグデータ解析プロトコルで成長が期待できる会社です」「○年3月期決算は計画の範囲内で着地」といった主張したいこと・伝えたいこと。題材は「コーポレートストーリー」だったり、「○年3月期決算」「SDGsへの取り組み」などの話す・取り上げる内容。そして、シナリオづくりは、題材の中で主題を説明したり、補強したりするためのサブテーマを選んで、伝える方法、ツールや表現を調整して完成させるという流れだね。

東堂:主題と題材の関係を考えると、例えば「○年3月期決算」を題材にした場合に、主題は「計画の範囲内に着地」かもしれない。あるいは「範囲内に着地した」を材料に「競争力、中長期成長力に変化なし」と展開して、「成長期待企業」という主題を強化する⋯⋯といったことですか。

大森:おお、いいねえ!そんな感じ。

社長の個性と聞き手の需要

大森:主題と題材、シナリオの関係についてニュアンスをつかんでいただいたところで、話を元に戻していいかな。

広子:はい、「社長の個性に合わせて」という話でしたね。

大森:社長が会社経営で、得意としてきた、これまで主に担当してきた役割が何なのか。研究開発なのか、マーケティングなのか⋯⋯。A子さんの会社の社長は、技術開発者だったよね。

広子:そうか!表現方法については、社長の得意なところを中心に演出するということですね!逆に不得意なところは、なるべく簡素にしたりと⋯⋯。

A子:確かに得意なところを説明するのは、苦にならないようですからいいかもしれません。でも、不得意なところに大切な根拠があったり、メインの題材だったりすると調整が難しいですよね?

大森:もちろん、主題が変わったり、根拠が乏しくなったりするのは行き過ぎだね。だけど社長が会社成長の中心にいたのは紛れもない事実だから社長の得意な部分が根幹部分にないなんてことはないと思うよ。まあ、苦手なところは、VTRを使って説明したり、場合によっては話し手を変えてもいいよね。

A子:なるほど、そうですね。

大森:さて、大切なのは、相手方に主題を伝えることだよね。そのためにIR担当者が社長に事前にレクチャーしておくべきことは?

広子:相手に伝えるには、相手が知りたいことを分かっていること、でしたよね。

大森:素晴らしい。さすが、広子さん。

広子:投資家の観点からも分かりやすく加工することこそ、IR担当者の仕事!ですね。

A子:あっ!そういえばこないだのロードショーで社長が、「一体何を聞きたいのか分からない」と頭を抱えていました。

広子:私も最初は何を聞かれているのか分からなくて怖かったもの。でも投資家が知りたいこと、聞きたい意図が分かると、だんだん怖くなくなりました。特にIR分野では、経営に関係あることを質問してくれていると理解できると、前向きになれましたね。

A子:ありがとうございます。社長の個性に合わせるシナリオの範囲も分かった気がします。社長も納得されそうです。

広子:それはよかった。

A子:オンラインで実施することになりそうですが、他に注意することはありますか?

大森:そうだね、社長が主役ということを打ち出すのだから、用意された原稿を“読む”のではなくて、自分の話として咀嚼して話すことは重要だよね。一方で、フリートークでいいかというと⋯⋯。

広子:IRですから、開示範囲も意識してもらわないとですね...

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