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IRの学校

IR、リモート下の問い合わせ対応

大森慎一(バンカーズ)

広子たちはIR担当として、忙しくも刺激的な日々を送っている。リモートワークも定着してきた一方、問い合わせ対応の引継ぎでトラブルが……



大森:こんばんは。あれっ、ちょっとご機嫌斜めかな?

広子:今日は、少し言い過ぎてしまったなぁ……と。

大森:うん?珍しいね。何があったの?

広子:株主様からの問い合わせの引継ぎがうまくできておらず、二次クレームを拾ってしまって、東堂に、ついついきつく当たってしまいました。

東堂:広子さん、すいませんでした。

広子:私の方こそ、言い過ぎたわ。ごめんなさい。

大森:じゃあ、水に流して、始めましょうか?

広子東堂:はい、お願いします。

リモートワーク下での引継ぎ

大森:気まずい勉強会の再発防止を願って、今日の話を整理して聞くことから始めましょうか。

東堂:はい。月曜日に株主様から受けた質問をその場では答えきれなかったので、後日ご回答として、連絡メモを残したのですが、その内容が至らなくて……。

大森:ふむふむ、株主の質問はクレームではなかったんだよね。

広子:そうですね。新製品発表のニュースリリースに関連した質問だったので、いつものように広報と研究所に確認して、という流れで対応しました。

大森:なるほど。……あれっ?そういえば、広子さんたちの会社では部署ごとに自宅勤務、リモートワークの日を調整しているんじゃなかったっけ?

東堂:そうなんです。部内のコミュニケーションは必要だ、という観点で部署ごとにシフトを組んでいたのですが、リモートワークシフトもだいぶ慣れてきたのと、部署間の連携がとりづらい、他部署にかかってきた電話を受けても手間なだけということで、各部署で最低ひとりは出社している状況をつくろうということになりました。

大森:そうだよね、広子さんも「〇〇部署が捕まらない」ってぼやいていたものね。

広子:そういうこともあって、シフトを変えました。

大森:なるほど、なるほど。じゃあ、そもそも、株主の質問をどういう形で引き継いだんだい?

東堂:社内のコミュニケーションツールのチャンネルに、やり取りの顛末を書きこんで、対応をお願いしました。

大森:株主とはどういう手段でコミュニケーションを取ったの?

東堂:電話です。

大森:なるほど、電話のやり取りをメモした感じかな?

東堂:はい、そうです。なるべく5W1Hを明確にしながらメモしたつもりだったんですが……。

大森:5W1Hというと、「〇〇という株主から、〇〇という質問を受け、〇〇部署に確認して〇〇と答えました。〇〇と追加質問を受けたのですが……」という感じかい?

広子:まさにそんなメモでした。しっかり内容が書かれていて、悪くないですよね?ただ、それを読んだ私が株主様の疑問点を理解できなかった、早とちりしてしまったのが悪いんです。

東堂:そんなことないです!メモをしっかりとれば、よかったんです。

大森:オッケー、美しき師弟愛みたいでいいんですが、あえて聞きますね。じゃあ、東堂さんはどのように書けばよかったのかな?再発防止策を考えているんだから、その観点で。

東堂:もう少し、株主様のおっしゃったことを丁寧に書けばよかったです。

大森:そうかな?長いメモを読むのも辛いよね。いっそのこと録音して聞いてもらえばいいんじゃない?大変非効率ではあるけど。

東堂:そうですねえ……。

広子:やはり、リアルにコミュニケーションがとれないリモートワークの限界でしょうか?

大森:う~ん、そういうことではないと思うよ。必要なら電話でもオンラインMTGでも引き継ぐ手段はある。今回の場合、改善すべき点はいくつかある。

東堂:お願いします。

必要なメモのひな型とは?

大森:まず、メモに必要な事項を整理したひな型をつくること。次に、伝える場・ツールを見直すこと。最後に、全社的に電話当番的なシフトが効率的か再検討すること、かな。ツールはコミュニケーション目的のものより、タスク管理ツールの方がよいかもね。解決したかどうかの確認も後追いできるし、ノウハウとしてもためやすい。

広子:なるほど、まずはひな型ですね。

大森:そうだね、IRはお問い合わせを受ける部署だから、質問・問い合わせの主旨を理解する能力は重要だよね?

広子:はい、聞く力ですね。

大森:そう、今まで蓄積したIRノウハウをメモの形に集約するのだよ。

広子:なるほど、なるほど。何かヒントはあります?

大森:さっき5W1Hという言葉があったけど、たぶん、受け手の5W1Hが中心だったのではないかと思う。でも、質問された時は何に注目している?

広子:例えば、質問者はどういう立場で、何を見て、どう思って、どのような感情を持っているのか……とかですね。そういう意味では質問者の目線での5W1Hというイメージでいます。

東堂:そうですね、質問そのものより、何を解決してほしいのか、傾聴します。

大森:いいんじゃない。IRの説明会や株主総会では、質問の復唱をするけど、質問のオウム返しではなく、相手のほしい回答を意識して、質問を整理するよね。そのイメージを整理しておくと、回答案をつくる部署にも伝わりやすいかもね。ついでに、関連する開示済み情報も分かるといい。

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