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広報担当者のためのマーケティング発想入門

BtoB専門商社の広報活動 働く場、学ぶ場の「シーン」を提供

片岡英彦(東京片岡英彦事務所 代表/企画家・コラムニスト・戦略PR事業

「マーケティング発想のPR」を実践している企業のインタビューを隔月でお届けする本連載。今回は教育システムやオフィス構築などを手がける内田洋行・大久保昇社長にお話をうかがいました。

(左)内田洋行 代表取締役社長 大久保 昇氏
(右)片岡 英彦 (筆者)

「フューチャークラスルーム」の役割

片岡:今日は、内田洋行が提案する「働き方」「学び方」とは何か。さらにBtoB企業ならではの広報活動のあり方についてうかがえればと思います。今回の取材にあたり改めて、内田洋行の歴史を知り驚きました。創業は1910年ですね。

大久保:1910年に中国の大連で満鉄が必要とした測量・製図機器を供給する会社として創業したのが始まりです。戦後は「科学技術立国の実現」のため、理科教材などを中心に学校教育分野に事業を広げるとともに、いち早くコンピュータの製造販売事業にも参入しました。

片岡:現在は全国約4500の小・中学校で使用されている教材コンテンツプラットフォームのほか、中小企業向けの基幹システムやオフィス環境の構築、オフィス家具販売なども有名ですね。

大久保:来ていただいた東京・新川本社では「未来の学習空間」を提案する場として「フューチャークラスルーム」を公開しています。

片岡:「フューチャークラスルーム」を見学して、教育現場にこうしてICTが導入され、変わっていくのだと体感できました。文部科学省は小学校におけるプログラミング教育必修化について、今年正式に決定したところですよね。2020年に「端末一人1台」を目指すなど、現場には変革の波が訪れていると思います。こうした顧客との接点の場を本社内に設けられた意味と役割について教えてください。

大久保:実際に使っているシーンを我々が自覚できる場を社内につくりたかった、これが大きなきっかけですね。「売る側として、製品を提供するだけで満足していていいのか」という疑問が常にありました。製品を生み出している我々自身が、もっと利用されている方にどう使われるのかを知る必要があります。またお客さまにとっても具体的な場があることで、さらにアイデアを膨らませていただくことができます。アイデアを具現化するために、様々な試行錯誤を行う場として活用いただいています。

片岡:全国から多くの方々が足を運ばれているようですね。

大久保:おかげさまで、海外の様々な国からも来ていただいています。ただ、この場で製品の直接的な販促は行っていません。学生や子どもたちが学び、教員や教授が教えている現場のニーズをつかむための空間という位置づけですね。企業だけでなく、自治体や行政の方々にも製品を理解していただくきっかけにもなっています。「子どもたちの未来につながる、教育設備への投資に対する考え方が変わった」という声も聞かれました。

片岡:空間自体が新しい感覚のデザインで、いつでもどこでも情報が引き出せるユビキタス空間です。こうした環境で小学生がどういう行動をとるのか、日ごろのBtoBビジネスの現場では把握しきれないところもありますね。

大久保:学校の設備は児童・生徒のためのものですが、選ぶのは施設の管理を行う部門です。そこで、現場の学長・理事長といった購買の最終責任者の方々にも来ていただく。利用する側が何を課題として、どのように解決する必要があるのか、ともに集まる場となっています。

片岡:買う側も売る側も、双方が様々な気づきを得られそうです。

大久保:「フューチャークラスルーム」は多角的な視点で、一歩先の未来を提案する象徴的な場所であるべきだと考えています。

未来の学習空間を提案するショールーム「フューチャークラスルーム」は東京本社・大阪・九州の3カ所にある。

マルチスクリーンやタブレット端末を活用した授業などを提案する。

顧客に寄り添った「働き方変革」を

片岡:企業も官公庁も今は「働き方」の見直しが進んでいます。日本の「働き方」を変えていく上で、どのようなビジョンを持たれていますか。

大久保:内田洋行では今から28年前、企業内の研究所として「知的生産性研究所」を設立しました。この研究所が「働き方」についてのコンサルティング活動を始めたのは7年前で、150件のプロジェクトを進めています。以来、「働き方の変革」が経営の中長期における重要テーマとなりました。単に「知的生産性」と呼ぶよりも「働き方」という具体性ある言葉にすることで、もっと前向きに課題解決を目指しませんかと提唱しました。

片岡:創造性の有無や残業時間の多少はともかく、「好きなように働けない」という不満の声を私の周囲ではよく聞きます ...

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