広報が付き合うべきは、報道関係者だけではない。業界アナリストとの関係性の築き方について、IT業界を中心に解説していきます。
中立の立場で特定業界のマーケットについて専門知識をもとに語る業界アナリスト(産業アナリスト)の存在は、企業にとっても非常に重要で積極的に接点を持つべき相手です。ただ企業の戦略により、その付き合い方や頻度、方向性などは大きく異なります。
そこで今月と来月の2回に分けて、実際にアナリストとの接点を持っている企業の「中の人」へのインタビューをお届けします。今回は、特に海外での認知度向上のために外資系の調査・コンサルティング会社との接点を強化しているセゾン情報システムズ(東証JASDAQ上場)の堀野史郎さんに、海外でのアナリストリレーションズを中心にお話しをうかがいました。
「表彰台に上がる」ことが大事
─セゾン情報システムズでは今、どんなビジネスを展開していますか。
当社はクレジットカードビジネス、流通小売業を中心とする多くのお客さまのITシステム構築、運用に携わっています。私の所属する事業部では国内のみならず、海外市場に向けてファイル転送、データ連携ツール「HULFT(ハルフト)」を販売しています。既に国内ではシェアナンバーワンを達成していました。
実は「国内よりも、海外のシェアの方が高い」という事実はビジネスにおいて有効です。国内ではボトムアップ型の製品採用が多くありますが、海外ではトップダウンです。企業の経営層自らが中立な立場で書かれているアナリストレポートを重視し、製品の選定に当たるのが一般的だからです。
そこで「表彰台に上がる」こと、つまりアナリストレポートで3位以内に入ることを目標に、海外向けアナリストリレーションズを強化することになりました。既に自社製品がファイル転送やデータ連携分野で大きなシェアを持っていることは体感的に分かっていました。あとはアナリストに正しくインプットを行うだけです。
該当レポートがない!秘策は?
─アナリストレポートにも多くの種類がありますが、どのレポートでの掲載を目指すかもポイントですね。
まさにそのとおりです。当社の製品も、製品選定に影響すると言われる著名な調査コンサルティング会社が毎年発表している資料にはあてはまるカテゴリーがありませんでした。つまりどんなに情報をアナリストにインプットしても、そのレポートに掲載されることはできなかったのです。そこで、自社製品に当てはまるカテゴリーの調査があるかを調べ、別カテゴリーのレポートに掲載されることを目標とし、定期的な情報提供を開始しました。
調査コンサルティング会社には、ベンダーブリーフィングの窓口があります。そこに連絡を入れ、四半期に一度、製品やユーザーの概要、製品への投資などについて定期的にアップデートを実施しました ...