広報が付き合うべきは、報道関係者だけではない。業界アナリストとの関係性の築き方について、IT業界を中心に解説していきます。
前号では、業界アナリスト(産業アナリスト)の取材対応について紹介しました。記者の取材と似ている面、異なる面がそれぞれあります。アウトプットが見えづらい場合でも、自社のサービスやコンセプトを理解してもらい、付き合うべき相手であることが伝わったでしょうか。今回は、1994年に設立された国内のリサーチ・コンサルティング会社であるアイ・ティ・アール(ITR)の取締役COOである三浦元裕さんへのインタビューをお届けします。
具体的かつ中立性を重視
──ITRでは具体的にどんなサービスを提供していますか。
客観・中立を旨としたアナリストの活動を通して、最新の情報技術(IT)を活かしたビジネスの成長とイノベーションの創出を支援しています。戦略策定から製品・サービスの選定に至るまで、豊富なデータとアナリストの知見に裏打ちされた的確なアドバイスを提供してきました。
サービスは大きく3つあります。
ひとつ目は、ユーザー企業(製品やサービスを導入する企業)の意思決定を支援するアドバイザリー/コンサルティングサービスです。様々な調査を行い、知見を持っているアナリストがユーザー企業の「これってどうすればいいの?」という悩みに対して「こんな進め方がベストプラクティスですよ」「調査で見るとこれが多数派です」「こんなやり方で成功した会社がありますよ」といった情報提供を行うものです。主に企業の情報システム部門に契約をいただいています。
2つ目はベンダー(製品・サービスを提供する企業)向けのサービスです。「こういう打ち出し方でメッセージを作ったらいいのでは?」とユーザー企業の声を調べて、製品プロモーションの仮説検証のお手伝いをしています。
3つ目は、リサーチのサービスです。第三者として伸びる分野やシェアなどを調べて、どこの製品が売れているかなどを調査したレポートを発刊しています。
情報が氾濫している現在、最終的に決定を迫られるユーザーに対して、ネットで調べられる情報、出入りのベンダーが持ち込む情報などとは視点の異なる、より具体的かつ中立的な情報をお届けしています。
私自身は商社やメディアでの勤務経験があり、商社では情報システム部門が、メディアでは製品を提供しているベンダーがお客さまでした。この両方を経験して「ボタンの掛け違い」があるなと気づいたんです。ベンダー側は、情報システム部門に刺さらないマーケティングのメッセージを連呼している。情報システム部門側も、ベンダーからの情報発信を単なる売り込みとして遠ざける傾向がある。この両方の「ギャップを埋められないか」とITRに入社しました。
明確な窓口と迅速な対応
──サービス内容をうかがうと、企業のマーケティング部門や広報部門は積極的にアナリストとコミュニケーションをとったほうがよさそうだと改めて思いました。
一番やり取りしやすいのは、問い合わせ先が明確になっており、アナリストが問い合わせたときに迅速に対応いただけることですね。すぐに適切な人につないでくれる担当者の方は、社内でのコミュニケーションがうまくできている方なのでしょうね。また、言えないことが多い場合にも、NDA(秘密保持契約書)を締結して、ある程度の情報を聞かせてくれるとありがたいですね。その内容は書けなくても、マーケットがどんな方向に向かうのかを推察するヒントになります ...