7月12日に開かれた「インターナルコミュニケーションフォーラム」では、クロスメディア戦略をテーマに、社員の行動に影響を与え、最終的に会社を変えていくコミュニケーションのあり方を探った。

- 第1部 広報がリードする企業ブランディング
博報堂コンサルティング 森門教尊氏
産業編集センター 相山大輔氏 - 第2部 グループ報『きりん』と社内コミュニケーション
キリンホールディングス 川角久美子氏 - 第3部 社員の心を動かす90周年記念事業
大島椿 坂本 薫氏 - 第4部 企業理念経営を体現するインターナルブランディング
オムロン 井垣 勉氏
プログラム
第1部では博報堂コンサルティング、エグゼクティブマネジャーの森門教尊氏と産業編集センターはたらくよろこび研究所 企画営業部 部長の相山大輔氏が登壇し、今回のイベントの基調対談を行った。
ブランドは立ち上げ後こそ肝心
対談の中では、「従業員の当事者意識を引き出すためにできること」や「メディアの上手な使い分け方」といったテーマを扱いながら、両者が企業のインターナルコミュニケーションにおけるクロスメディア戦略について持論を展開した。
森門氏は「コーポレートブランドは、つくるまでよりも立ち上げた後こそが肝心」と指摘する。「会社のブランドを体現したメッセージを考える人はたいてい経営層など社内の“成功者”であるケースがほとんどで、会社に対する関心もロイヤリティも高い。一方で、メッセージを届けるべき社員の意識はそれと比べるとずっと低いはず。いわば『サイレントマジョリティ』を呼び起こすにはどうすればいいかまでを見越した企画立案が欠かせない」と指摘した。
コミュニケーションに携わる広報の仕事の醍醐味についてもトークは盛り上がった。相山氏は「広報の仕事は、社内の様々な部署とコミュニケーションを取れる貴重な立ち位置。会社全体を見回せるからこそ、自分たちの力で会社を変えられるという実感を持てるやりがいのある仕事だ」と話し、誇りを持ちながら仕事をしてほしいと来場者に呼びかけた。

(右)博報堂コンサルティング 森門教尊 氏
(左)産業編集センター 相山大輔 氏
現場を通して経営方針を伝える
第2部以降では企業の実例が紹介された。トップバッターとして登壇したのは、キリンホールディングスの川角久美子氏。「事業の多角化に伴い組織が複雑化すると、従業員は所属組織、雇用形態、インフラ環境も異なり情報の受け取り方も様々」と話す。そこで同社は必ず手元に届く紙のメディアに着目し、『きりん』と題したグループ報を季刊で発行。国内従業員や海外駐在員、約2万5000人に配布している。
2015年にはリニューアルを実施しているが、その際のポイントはグループ報の位置づけとターゲットを明確にすることだった。「グループの戦略や方針を分かりやすく伝える媒体であり、若手リーダーや30代のリーダー予備群をターゲットに絞ることで軸がぶれなくなり、読者からも評価が上がった」とその成果を披露した。

キリンホールディングスの川角久美子氏(左)はグループ報について、大島椿の坂本 薫氏(右)は90周年記念事業の取り組みについてそれぞれ紹介した。
世界規模に広がる共鳴の輪
第3部では伊豆大島発祥の椿油専門メーカー・大島椿の坂本 薫氏が登壇した。今年で創業90周年を迎えた同社は、このタイミングで「GO NEXT 10!」というコンセプトを掲げた周年記念事業に着手。巻き込み・自分ゴト・展開、という3つのキーワードを掲げ、若手~中堅層を中心に「大島椿らしさ」を考えるワークショップを開いた。
「進捗はレポートにして掲示した。ワークショップの成果をまとめた冊子『椿の種』では、施策を通して決まった『大島椿らしさ』を体現するための宣言を、参加していない社員からも拾って掲載し、自分ゴト化を促した」。同社ではほかにも新入社員が同社の工場や会社のルーツをたどるドキュメンタリー映像も制作。「社内のチームワークで周年事業を成功に導くことができた」と振り返った。
最後に登壇したオムロンの井垣 勉氏は、冒頭「これからの社内コミュニケーションには、社内外のメディアを組み合わせて社員に共鳴と行動を呼び起こす企画や展開が欠かせない」と自社のインターナルブランディングに対する姿勢を強調した。
同社では年に一度「TOGA(The Omron Global Awards)」という制度があり、グローバル全社で1年間かけて実施してきた活動を表彰している。チャレンジし続ける風土の醸成を狙ったもので、チームでチャレンジを宣言し実践したテーマの中から優秀事例を選出して表彰する。勝ち上がり方式を採用し、グローバル規模で選考プロセスを見える化しているのも特徴だ。「TOGAは企業理念を実践し共鳴の輪を広げる社内の一大イベントとしてこれからも育てていきたい」と井垣氏は期待を寄せた。

オムロン 執行役員グローバルIR・コーポレートコミュニケーション本部長の井垣 勉氏は、国内外の従業員に「共鳴」と「行動」を呼び起こすための取り組みを紹介した。
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