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ヒットの仕掛け人に聞く

一時は3年半待ちの超人気に「おもいのフライパン」を生んだ仕掛け人に迫る

石川鋳造/おもいのフライパン

愛知県で鋳物業を営む石川鋳造が初の消費者向け商品として開発した「おもいのフライパン」。家庭で肉をおいしく焼きたいという思いを実現し、一時は3年待ちになるほどの注文が集まった。

    DATA

  • 商品名:おもいのフライパン
  • 希望小売価格:12,650円(税込)~
  • 主な販路:公式通販サイト、ふるさと納税、実演販売

「おもいのフライパン」誕生の背景とは?

──「おもいのフライパン」開発の背景を教えてください。

当社は、鋳造製品の製造を事業の核としてきました。戦後の高度経済成長期以降は、自動車産業の成長とともに、自動車部品を製造する企業が主要取引先になっていました。

しかし、自動車産業における市場の構造が変化し、売上が減少する状況に危機感をおぼえはじめた2008年頃、社内の若手社員を中心に新商品開発プロジェクトを立ち上げたのです。

──プロジェクトの中で、フライパンの開発が選ばれたのはどのような経緯でしたか。

プロジェクトで最初に行ったのは自社の強みの分析でした。熱が伝わりやすく、保温性が高いことが鋳物の特徴です。これを生かすには調理器具が良いのではないかと考えました。

個人的に、家では肉がおいしく焼けないなと思っていて。飲食店と同じようにできないかをずっと考えていました。当社で調べた結果、肉の質や焼き方に加えて、飲食店では熱伝導と保温性の観点から鉄板を使っていることが多く、厚みも平均で1.9ミリほどあることがわかりました。そこで、熱伝導と保温性の観点から鋳物製のフライパンは最適だ、と確信したのです。

しかし、鋳物の弱点は重さです。家庭用のフライパンで重視されるのは使いやすさと軽量性。既存の鋳物や鉄製のフライパンも軽さを追求して開発されていました。薄く、軽いものを目指すと、熱伝導が良すぎて食材本来の旨味を出せません。さらに、鋳物の特性である保温性は低下しますし、軽さでもステンレスやアルミとは勝負できません。そこで私たちは既存品とは異なり、鋳物の良さを最大限出せる、重く、厚みのあるフライパンの可能性に賭けることにしました。

商品
石川鋳造にとって初のBtoC商品「おもいのフライパン」。鋳物の特徴である熱伝導率と保温性を生かし、家庭でも肉をおいしく焼くことに特化したフライパンだ。市場に流通するフライパンが軽量でコーティングされているものが多い中、重く、無塗装という真逆の発想で製造されている。初期の使用時に油をなじませる必要があり、多少の手間はあるが、油がなじめば手入れも簡単になり、長く使用できる商品。

テレビ番組をきっかけに1日で1万5000本の注文が

──プロモーションではどのようなことをされましたか。

2023年2月17日に発売し、5月末の時点で販売計画の1.5倍に到達しています。発売当初から想定以上の動きを見せていて、現在も実績に応じた生産の最適化を図っています。

BtoCの商品は初めてですし、広告宣伝費もない。できるだけお金をかけずに知ってもらう方法として、SNSを使ってフライパンの開発過程を公開しました。試作品で肉を焼いてみたり、キャンプに持っていって使ってみたり。利用シーンを訴求する動画の投稿を続け、知人や友人を中心にフォロワーが増えていきました。

2017年に量産品を発売開始すると、その…

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