業務用酒販店の吉田酒店(宮城・仙台)は今年5月、高級酒をメインとしたECサイト「buzaemonオンラインストア」をオープンした。取り扱う商品は、実際の飲食店で取り扱われている商品であり、もともと一般には流通していない商品もある。世間には、仕入れ元や保存状況が分からないお酒が溢れているが、同社が扱う商品は、正規代理店や蔵元から直接仕入れたものであり、品質も保証されている。
また、業務用酒販店ならではの視点と、最適な保存環境を活かすことで、最高品質の商品を最高の状態で、生産者から消費者に直接届けることができる。飲食店を顧客としていた同社の新しい試みであるECの立ち上げの経緯と展望について、同社の吉田智博氏に話を聞いた。

buzaemonオンラインストア
卸売業ならではのEC
──飲食店への卸売業からECの立ち上げに至った経緯について教えてください。
ECの立ち上げは今年5月ですが、もともと昨年の新型コロナウイルス感染拡大のころから計画はしていました。当社は仙台を中心とした飲食店への業務用酒販店ですので、感染拡大防止のための休業要請の影響を大きく受けました。飲食店が休業になってしまえば、当社のお客さまへお酒をお届けするということもできなくなるのは当然です。われわれは、生産者と消費者をつなぐのが酒屋の大切な役割だと考えていますので、ECによる直販でお客さまにお酒をお届けしようと考え、立ち上げに至りました。
ただ、単にお酒を販売するだけでは、業務用酒販店である意味がありませんので、われわれが取り扱っていたお酒の中でも、これまで一般には出回らなかった・日の目を見てこなかったお酒に着目しました。そういったワインや日本酒にスポットライトを浴びせ、価格も一般の酒屋では購入できないような高価格帯を中心にしています。ただ販売チャネルのひとつとしてECを立ち上げたわけではなく、業務用酒販店ならではの品揃えで「特別なお酒」を購入いただけるECとして、お客さまには価値を感じていただきたいと考えています。
──そのようなEC自体のブランディングも重視されているのですね。
はい。EC立ち上げを計画していた当初は、ECモールへの出店も考えていたのですが、どうしてもモールという性質上、横並びになってしまいます。高級酒専門ECとしてのブランド価値が、消費者に伝わりづらいんじゃないかと思い、自社ECのみの展開に決めました。ECサイトのデザインや梱包などの細かい部分も...