近年、飲食店で求められる顧客満足度向上の施策は、接客・接遇だけではなくなっている。さまざまなテクノロジーの導入によって、顧客の体験を変えて、顧客満足度の向上を図る飲食店も登場してきた。
事例 1 グリーンハウスグループ
店内の「喜び」を数値化 社是を起点とした取り組み
グリーンハウスフーズが展開する「とんかつ新宿さぼてん」では、AIカメラによる感情分析を導入。グループのチーフデジタルオフィサー(デジタル化推進責任者)の伊藤信博執行役員に話を聞いた。
「より良い接客」と「顧客満足度」の相関関係を実感
グリーンハウスは、戦後間もない食糧難の時代に「社会に役立つことがしたい」という思いから生まれた「食と健康の総合ホスピタリティ企業」である。昨年7月から、同グループ会社のグリーンハウスフーズが展開する「とんかつ新宿さぼてん」では、一部店舗でAIカメラによる画像分析を導入し、店内の分析をしてきた。特に、店舗スタッフと来店客の「喜び」を数値化する感情分析によって、スタッフのモチベーションアップや顧客満足度向上に成功している。
「従来、飲食店の一般指標として数値化できるのは、来店人数や売上高などで、お客さまの満足度というのは、アンケート程度でしかわかりませんでした。しかし、『笑顔』などを数値としてリアルタイムで把握することで、より良い接客と顧客満足度の相関関係を店舗と共有できるようになります」と伊藤氏は話す。
実際に、自身の接客の効果を実感することで、店舗スタッフのモチベーションが上がり、店舗スタッフ全体が一体となって働くことができ、顧客満足度向上につながったという。
イノベーションの探求は「社是」具現化のための手段
ここまで、テクノロジーの導入を推し進められたのも、グリーンハウスの社是「人に喜ばれてこそ 会社は発展する」がすべての起点になっているからだと伊藤氏は言う。
「AIなどのテクノロジーが進化しているからといって、導入することが目的になっては意味がありません。何のためにイノベーションを探求するのか、お客さま目線でじっくりと考える必要があります。『人の喜び』の数値化は、『どうすればお客さまにより一層喜んでいただけるのか』について、店舗や本部が一体となって心で考えるという、社是を具現化するための手段にすぎません」(伊藤氏) …