市民とデザインするエリアマネジメントの取り組み
「シビックプライド2【 国内編】」
伊藤香織+紫牟田伸子 監修シビックプライド研究会 編著
ブランディングに必要なのは、「他者との差別化」「消費者との信頼関係」に加え、「提供者がプライドをもつ」こと。本書の実践的な事例は、十二分に活用できる。
日本の自治体でも、シティプロモーションに力を入れる地域が増えている。愛知県・名古屋市の栄ミナミでも、2007年から14町内会6商店街3組織が一体となった街づくりを計画。今年秋には、都市再生推進法人の認定を見据えた法人化を行う。自治体や大手ディベロッパーが主導するのではなく、市民が中核になる取り組みは先進的と言える。そして、この活動の中核を担うのが、名古屋工業大学大学院准教授の伊藤孝紀氏だ。
全国でエリアマネジメントがうまくいっている地域は、丸の内や日本橋、六本木など、都内でもいくつか見られる。しかし、そういった地域と、伊藤氏たちの活動の違いは「活動の担い手が大企業の一社か、地域の小さな組織の集合体か、という点にある」と同氏は解説する。栄ミナミの活動は、自治体に任せるでも、大企業が主導するのでもなく、街の地権者や商店街、住民たちが連携をして街の方向性を決めている。こういった都市再生推進法人化の動きは、栄ミナミが全国で初めての試みだという。法人にすることのメリットは、「都市利便増進協定が組める」「都市再生整備計画が作成できる」という2点が挙げられる。「市民自ら街づくりの骨子をつくることができれば、これまで規制の面から難しかった、公園や道路上での物販や飲食、屋外広告の掲出など街に賑わいを持たせる施策を実施・具体化することができます」と伊藤氏は話す。
伊藤氏は栄ミナミの活動について ...