無料通話・メッセージアプリ「LINE」がプロモーション手段として評価されている。ここ最近で面白いのが「マストバイスタンプ」というサービスだ。コンビニなどで売られている商品に個別のシリアルナンバーをつけ、LINEアプリでそのナンバーを入力すると、オリジナルスタンプがもらえるという仕組みだ。
例えば、JTが販売している清涼飲料水「桃の天然水」ではシリアルナンバー付きの商品を展開。すると4週間で20万ダウンロードを記録したという。つまり、20万本の売り上げに貢献したというわけだ。この20万本という数字はこの期間における売り上げの16%に相当する。つまり、LINEのスタンプを配っただけで、売り上げが16%伸びたというのは驚異的な数字だろう。
LINEの出澤 剛取締役は「JTの担当者からはもっと商品を出荷しておけばよかったという話をいただいた。現在、LINEマストバイでは五つほどキャンペーンを手がけているが、すべて効果があった」と話す。
実際にどんなものか試してみた。9月3日から2014年3月3日まで、江崎グリコのチョコレート菓子「ポッキー」がLINEマストバイを使っている。箱の裏面にはダウンロードできる8種類のスタンプが印刷されている。箱を開けると上ぶたの裏側に14桁の数字が並んでいる。スマートフォンからキャンペーンのサイトにアクセスし、LINEアプリを起動。あとはシリアルナンバーを入力すると、ダウンロードが始まる仕組みだ。とても簡単に新しいスタンプを入手できた。
そのあと、消費者がスタンプを使って友人とメッセージのやりとりをすれば、友人にもポッキーが認知される。友人がそのスタンプを欲しいと思えば、友人はコンビニに行ってポッキーを買うことだろう。その友人がスタンプを入手して、別の友達に送れば、また商品の認知は広まっていく。こうして、ソーシャルの輪を通じて、商品がプロモーションされていくのだ。
ポッキーといえば、誰もがよく知るロングセラーの商品だ。当然、安定した売り上げを誇るのだが、こうしてLINEと組むことで、しばらくポッキーから離れていた消費者も巻き込むだけでなく、これまで全くリーチしなかった層にも触れさせることができる。
LINEマストバイ自体がまだ珍しく、スタンプの希少価値もあって効果は大きいはずだ。これがいつまで続くかは未知数だが、O2O(Online to Offline)の新しい形として、しばらくコンビニをにぎわせそうな雰囲気がある。
ケータイ・スマートフォン ジャーナリスト 石川 温氏(いしかわ・つつむ)1999年に日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社。『日経トレンディ』編集記者を経て03年に独立後、ケータイ・スマホ業界を中心に執筆活動を行う。メルマガ『スマホ業界新聞』(ニコニコ動画)を配信中。 |