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感じるブックジャケット

見えそうで見えない、トレーシングペーパーを使ったブックカバー/Lace Cover

久能真理

電子書籍では得られない紙の本の魅力のひとつが、手触りや質感だ。ブックジャケットをつけられるのも本ならではの楽しさ。さまざまな質感を持つ竹尾のファインペーパーを使用し、そこに多彩な印刷加工技術を掛けあわせることで、触って感じる新しいブックカバーを提案していく。

01 ブックジャケット使用例

02 「CEPO 2014-15 Autumn & Winter」ポスター
03 「TENNE HANDCRAFTED MODERN」ロゴ・2014-15 A/W 展示会DM・タグ・名刺
04 「yamanami」カタログ・ロゴ

見えそうで見えないブックカバー

トレーシングペーパー越しにうっすらと透ける本の表紙。見えそうで見えない、その感じが気になる。「透けるというトレーシングペーパーの特性を生かしつつ、本のタイトルは見えないようにしたデザインです。ブックカバーなのに透けているのがあまのじゃくで面白いと思って」とアートディレクターの久能真理さんは話す。

本の表紙と背表紙に当たる部分はレース模様の白い箔押しで覆い、下が透けないようにしている。箔押し以外の部分にもピンクとシルバーのオフセット印刷で幾何学模様を描き、トレーシングペーパーの透け感や軽やかさはそのままに、ほどよく見えない感じにし、ブックカバーとして日常使いできるものにした。レースの細かな穴から下の色がちらちらと覗くのもポイントだ。

「タイトルが見えないようにするためには、シルク印刷、箔押し、オフセット印刷などの方法が考えられますが、白のオフセット印刷は透けてしまうと以前の経験でわかっていました。箔押しが一番可能性がありそうでしたが、実際どのくらい不透明性があるのか、加工はやってみないとわからないので、楽しみ半分、心配半分で待ちました。結果的にほぼ想像通りに仕上げていただけました」。すぐには気づかないが、実はレースの左右で模様が切り替わっているという仕掛けもある。「裏から見ると、切り替えている場所がわかると思います。間違い探しのような、トレーシングペーパーならではの遊び心です」。

高級感を出すための遊び紙などに使われることが多いトレーシングペーパーだが、今回のように印刷加工で部分的に不透明な部分を作ることで、活用の可能性が広がることに気づいたという。「本の表紙にも使えそうだし、封筒やインビテーションカードに使っても面白そうですね」。

久能真理(くのう・まり)
1979年千葉県生まれ。2003年武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒業。yotsugi yasunori incorporation、good design companyを経て2011年に独立。ロゴや広告制作、ファッション関連のグラフィック、本の装幀、パッケージ、など幅広くアートディレクションを手がけている。

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