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オペレーションとデザインで課題解決 水戸ホーリーホック30周年事業の裏側

The Unit、TANGLE

J2リーグに所属するプロサッカーチーム「水戸ホーリーホック」がクラブ創立から30周年を迎えた。同クラブは、企業の事業開発を支援するDCグループのThe UnitとTANGLEと連携協定を結び、周年記念事業を展開。その立ち上げと展開について、話を聞いた。

街中を青色に染めて「クラブの未来」を訴求

―The UnitとTANGLEが担われた領域と、パートナーシップを組んだ背景は。

宮内:私たちThe Unitは、経営資源としての「ひと」にまつわるソリューションを提供しています。お客さまの課題に対して、「ファンファースト(顧客視点)」や「マーケティング目線」も持った戦略的オペレーションを構築することで解決に導くことがミッションです。今回はTANGLEと共に、水戸ホーリーホック(以下、水戸H)さんのクラブ創立30周年事業に取り組んだわけですが、第三者目線でプロスポーツビジネスを捉えると、例えば天候や試合の勝敗など、先読みできない変数が非常に多い。他のスポーツチームとの協業も個々の業務負担が大きく、オペレーションも属人化しているため、本来の目的であるファンの獲得やLTVの向上の動きから少々遠ざかった動きをしてしまっていることが課題だと感じていました。

南雲:私たちTANGLEはサービスデザインの領域で、コンセプト開発からクリエイティブ制作まで、コミュニケーション全般を担当しました。

―今回の周年事業の全体像をお聞かせください。

瀬田:30周年事業のプロジェクトが立ち上がったのは約2年前。その頃、宮内さんと知り合い「スポーツチームの経営は人的リソースが限られるなかでやるべきことが多く、忙しいですよね」と意気投合し、今回の連携がスタートしました。スポーツチームの経営というのは、どんなにプロモーション企画を立てたところで、雨が降れば来場者は激減してしまいます。また、多くのチームがフロントも試合の準備や撤収に携わっており、スタッフのマンパワーだけでは、通常の試合運営以外に手が回らないのが現状でした。そんな課題感を理解してもらったことが意気投合した背景にあったと思います。

小島:私たち水戸Hは責任企業と呼ばれる親会社がなく、地元の企業の皆さんに支援をしていただく必要があります。30年歩んでこられたのは、サポーターをはじめ、ステークホルダーの皆さんの存在があってこそ。今回は、そうした背景と感謝を改めて伝えたいと思っていたんです。そのためには、ファンだけではない多くの人に伝わる新たな宣伝手法を取り入れたいと考えました。

例えば、茨城県は47都道府県で唯一、民放県域局がありません。通常はローカル局による応援番組などがあるものですが、メディア露出は圧倒的に他のクラブと比べて少ない。したがって私たちフロント自身が、いちメディアとして表に立ち、ステークホルダーのエンゲージメントを高めるという活動を行ってきました。そして、水戸Hが次のステップに進むためには、そこで働くスタッフの幸せな環境も重要です。組織としての成長が必要だと感じ、クリエイティブだけではない、事務局という形でプロジェクト全体のサポートをいただくに至りました。

―ホームタウンである15市町村を回って撮影をされたとか。

南雲:クリエイティブのひとつのテーマが、地元への再認識・再定着。メインコピーも「未来に立ち向かえ。」と定めましたが、今回の広告出稿はあくまでも通過点。サポーターや地域の皆さんに、これからの水戸Hをつくっていってほしいという想いが込められています。実際に現場では非常にたくさんの方に協力をいただきました。

瀬田:当初は社内でも“東京の広告会社が何をしに来たんだ”という空気はあったんです。でもそのうち、どんどん人が集まってくるようになった。全社会議でプレゼンテーションしていただく機会もあり、お互いをリスペクトする姿勢と熱意が、社内で伝播していったのを肌で感じましたね。

小島:でも初めはここまでやり切れるかという不安はありました。

瀬田:毎回、膨大なアイデアを共有してくださって、圧倒されながらどうにか食らいついていく感じでした。今回のプロジェクトを通して、こうしたクリエイティブやプロモーションにしっかり投資することを経験できました。ポスターやフラッグを様々な場所で掲出することで、スタジアムだけでなく街中を青く染めることができた。各種広告媒体の費用感も知ることができましたし、新たな視座を得られたと実感しています。

小島:やはり短期的には試合の勝敗で評価されてしまいますが、中長期的に見た時に、必ず成果が表れると考えています。

―今後の展望は。

瀬田:今回、自分たちでは気づけなかったクラブの価値や、新たな展開を提案いただけました。逆にこちらが提案したことに対して、南雲さんたちが前のめりになってくれた瞬間も非常に嬉しかった。今後も様々な切り口で連携していきたいです。

小島:近年はベトナムやドイツのクラブと提携して選手の育成やチームの強化を図ったり、農事業ブランド「GRASS ROOTS FARM」を立ち上げたり、クラブをひとつのプラットフォームとして新たな挑戦を進めています。私が考えるスポーツの魅力のひとつが「未来が分からないから楽しい」ということ。今回のプロジェクトでDCグループの皆さんと一緒に仕事をしていくなかでも常に感動がありました。今後も携わる人の心が動く事業を、共につくっていけたらと思っています。

南雲:今年2月のシーズン開幕時に、濱崎芳己監督から「J1昇格を果たす」という宣言がありましたが、クラブが未来を見据えているタイミングで携われたのも幸運でした。

宮内:日本にはプロスポーツチームの数が非常に多いため、その中で競争していくための魅力が必要です。水戸Hさんのように海外連携や新事業など、スポーツチームができること、やりたいことはたくさんある。その時に、スタッフがリソースを割ける状態を常につくっておくべきだと考えています。冒頭の課題感にもつながりますが、オペレーションを整え外部のリソースもうまく使いながら運営していくことが、ビジネスとしての成功をもたらす重要な要素のひとつです。そうした体制が組めれば、ゴールへの目線もブレることなく邁進できると思います。試合中を含めた、たくさんの人が携わる泥臭いリアルな部分、そして運営や宣伝広告などのデジタルの部分。そうした相反する領域を、私たちDCグループで支援していけたらと考えています。



    お問い合わせ

    株式会社The Unit

    TEL:03-6265-7765
    MAIL:info@the-unit.co.jp
    URL:https://the-unit.co.jp

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