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広告・メディア・マーケティング 2024年は、こう動く。

規制は真の顧客理解を考える契機にマーケティングの本質に原点回帰する

遠藤智史氏(LIFULL)、友澤大輔氏(イーデザイン損害保険)

2024年7月から、Googleは段階的にGoogle Chromeの3rdParty Cookieを廃止すると発表しています。今後、企業のデジタルマーケティング活動はどのような対策が必要になるのでしょうか。LIFULL マーケティング部副部長の遠藤智史氏とイーデザイン損害保険CMOの友澤大輔氏に聞きました。

情報取得の同意は公明正大に グレーな手法は逆効果

―Cookie規制がより厳格になる中、個人情報の保護と顧客のプライバシーを尊重しつつ、ターゲティング広告を効果的に行う方法をどう考えますか。

遠藤:個人情報保護やプライバシー保護の動きは不可逆の流れです。裏技や抜け道がないかを考えることに頭を使うのではなく、プライバシーポリシーなどできちんと自社のデータ取得方針を明示し、顧客にパーミッションを取って活用する。原理原則を徹底する以外にとるべき対策はありません。グレーな手法でパーミッションを取るということも出来なくはないと聞きますが、一度失った信頼は取り戻せません。公明正大に取り組むことが大前提であると思っています。

一方で、1stPartyデータの活用や、入札におけるVBBなどの自社データの活用はもちろん、Cookieの代替因子も今後出てくるのではないかと見ています。トライアンドエラーを繰り返しながら、自社のサービスに相応しい形を模索する必要があると考えています。

友澤:インターネット広告の歴史において、リターゲティング広告が始まったのは2010年頃。以降14年もの間、人を追い回す広告が高い効果を生み出してきました。広告と言いながら販売促進の施策です。ユーザーからすると、必要もないのに追い回されて、例えればティッシュ配りのティッシュを無理やりカバンにデータを取得するときも「これまでの常識だから…」と“しれっと取る”ことがまかり通って来た。目の前の効果ばかりを見すぎて、お客さまの体験をないがしろにしてきたと言わざるを得ません。これからは、顧客理解やコンテンツをしっかりつくるという、本来マーケターが大事にしていたことへ原点回帰していくのではないかと思います。

真のパーソナライズにはアンケートや定性調査も必須

―Cookie規制の強化は、デジタルマーケティングのトラッキング方法に大きな影響を与える可能性があります。これに対応するための新しいテクノロジーや手法はどのようなものが挙げられますか。

遠藤:ある意味、これも原点回帰かもしれませんが、現在MMMを自社でつくるプロジェクトが進んでいます。評価基準や指標の単位が違うものを混ぜても解は出てこないので、目的変数をひとつにした上で、Cookieに依存しない、様々な分析モデルを使うことにチャレンジしています。コミュニケーションにおいて注目しているのはアプリです。私たちのような住まい探しのサービスは、「高関与」「低頻度」「物件の入れ替えが激しい」「特定の時期に多く利用される」といった特徴があります。アプリインストール後、ニーズや検索条件をしっかりキャッチアップして、Cookieに依存せずに1to1で適切な物件や街を紹介することができれば、コミュニケーションの武器として非常に使い勝手が良いものになると思っています。

友澤:技術的なアプローチとしては、メールアドレスなどの個人が特定された認証済みの共通ID、推定的に「この人とこの人は同じだろう」と判断する推定ベース共通ID、プラットフォーマー側であるGoogleが提供する「プライバシーサンドボックス」、そしてLINEヤフーが提供しているデータクリーンルームの主に4つが挙げられます。

この4つのアプローチは全てユーザーの同意が前提です。3rd Party Cookieは完全に淘汰されるのではなく、事業会社がパーミッションを取れさえすれば、この先も使用できるのです。“しれっと”ではなく気持ちよく同意してもらい、良いデジタルマーケティングを実現させるためにも、CMP(コンセント・マネジメント・プラットフォーム)に対する理解も大事になってくるのではないでしょうか。

―パーソナライズされたマーケティングはどのように維持されるべきでし…

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