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パーソナライズと個人情報保護を両立させ、生成AIから得られるデータを活用するには?

有益伸一氏(電通デジタル)、栗原 聡氏(慶應義塾大学)

ChatGPTが2022年11月30日に一般公開されてから約1年。テクノロジーが日々進化するマーケティングの世界においても、生成AIの登場は大きな衝撃とムーブメントをもたらしています。電通デジタルの有益伸一氏と慶應義塾大学理工学部教授でAI研究者の栗原 聡氏が、マーケティングにおける生成AIの活用について対談します。

生成AIの登場によりマーケティングファネルも変化

―ここ1年でバズワード化した生成AIですが、今後の市場トレンドにどのような影響を与えるでしょうか。

栗原:まずは「AIを使える人/使えない人」による格差の広がりが懸念されます。生成AIを始め高い能力を発揮するAIですが、それでも私たちが使う道具であることには間違いありません。そして、使える人は単なる効率化にとどまらず、よりイノベーティブな使い道を生み出していくでしょう。OpenAIやMeta、Googleといった巨大IT企業がイノベーションを起こす度に世の中は大騒ぎするわけですが、それって、見方を変えれば我々は踊らされるだけの存在になってしまっている。自らの意思で踊るのならよいのですがね。

一方で有益さんを含め、ごく少数ながらAIを使える層はどんどん世の中をリードして、新たなイノベーションを続々と生み出し、世の中に大きな変化をもたらしている。私にとっては刺激的な状況ですね。

有益:ちょうど昨晩(インタビュー前日)、OpenAIの新しいリリースを受けて睡眠時間を削りながらコードを書いていました。まさに踊らされているなという感じです(笑)。

マーケティングにもたらす影響でいうと、生成AIの登場後、「認知→関心→購買→利用→継続利用」と流れていくマーケティングファネル上に「対話」や「相談」というフェイズが生まれました。例えば、購入検討のタイミングで生成AIと話せる対話型広告や、日々寄り添いながら悩みや購入後の不満を聞いて答えてくれるチャットボットがあれば、確実に購買率やリピート向上が見込めると思います(図1)。マーケティングのプロセスを見ると、もはや生成AIが関与しないところは、ほぼありません。非常に変化が激しい中、我々支援側も支援先の事業会社側も、必死にアダプトしようとしているところではないかと思います。

図1 生成AIで変わる顧客の購買行動

生成AIの登場により、マーケティングファネル上に「対話」「相談」というフェイズが登場し、企業側と顧客の対話により潜在層へのリーチや、既存顧客対応の向上、リピートなどが見込める。

―マーケティングにおいて、今後どのように生成AIを活用できるでしょう。

栗原:ユーザーがネット上に書いたクレームや商品・サービスの評価など、言葉で表現されたものは全て生成AIによって貴重なデータとして生まれ変われるようになりました。ただ、生成AIは間違えたりハルシネーション(事実に基づかない情報を生成する現象)が起こり得る技術なので、しっかりとした分析や整理を行うには、電通デジタルさんが培ってこられたようなデータ処理のためのノウハウが必要となる。つまり、生成AIという新しい技術が出てきたことによって、レガシーな技術もさらに本領発揮できるようになるということなのです。生成AIとそれ以外の技術を横連携できる能力も重要になるでしょう。生成AIは、単に言語を扱えるようになったこと以外にも大きなパワーを持っていると思います。

有益:生成AIは決して銀の弾丸ではなく、統計的なアプロ…

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