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広告・メディア・マーケティング 2024年は、こう動く。

参入相次ぐ「リテールメディア」事業 今、注目される理由とは

野田大輔氏(トライアルカンパニー)、濱口洋史氏(電通)

小売企業が保有する会員情報や購買データなども活用し、より購買に近い接点で生活者に働きかけることができるリテールメディア。近年、ECプラットフォーマーの他、大手小売り企業でもリテールメディア事業への参入が相次ぎます。なぜ、いま小売、メーカー、IT企業、広告会社など業界関係者から注目されているのでしょうか。トライアルカンパニー マーケティング部部長の野田大輔氏と、電通 データ・テクノロジーセンター長 濱口洋史氏に聞きました。

生活者の選択肢の増加に合わせた多様な接点でのコミュニケーション

―なぜ、いまリテールメディアが注目されているのでしょうか。

濱口:リテールメディアの定義には様々ありますが、私たちが考えるリテールメディアとは小売店が運営するECサイト上の各種オンライン広告や小売店の店舗に設置されたサイネージ広告などに見られる、小売店が媒体社となり提供しているメディアのことです。その特徴として、小売店のお客さまの購買やアプリ利用時のログなどの行動データの他、各小売店が独自に収集・所有するデータ、いわゆる「1stPartyデータ」を用い、精緻なPDCAを行えることがあげられます。コミュニケーションの打ち手としては主には広告やクーポン配信があります。

リテールメディアが注目される背景としてはひとつに小売店がデジタルにおける顧客接点を強化していることがあげられます。これにより、オンライン上の広告メディア開発が可能になったほか、各種のログデータの取得が可能になり、ターゲティングの精度が向上しました。加えてメーカー側が広告や商品開発に投資をした自社商品が流通でどれだけ売上を得ているかといったROIをシビアに見ることが常識になってきているという点も、データ分析ができるリテールメディアへの注目が高まった理由として考えられます。

野田:私は社会背景の変化もあげられると思います。一言でいえば対生活者向けのコミュニケーションの難度が上がっている。具体的にはマスメディアの影響力が減少し、単身世帯の増加や出生率の低下により市場の縮小と細分化が進んだことで、従来のようなマスコミュニケーションでは適切に情報が届きづらくなっているのです。

また消費者の多様化、選択肢の増加により商品が細分化しました。例えば昔は家族全員が同じシャンプーを使っていたけれど、今は個人の好みに合わせて家族分の種類を買うといった具合です。スーパーでの取り扱い品目が20年前の1.5倍に増加したというデータもあります。こうした背景もあり、一商品あたりの売り場面積は縮小し、売上も減少していきました。こうした点からもメーカーは自社商品に対する顧客のエンゲージメントを保ち続けるために、購買にもっとも近いリテールメディアの比重が高くなっているのではないでしょうか。

濱口:コロナ禍を経て購買方法の選択肢も増加しました。オンラインですべてが完結する買い物から、オンラインで購入した商品を、実店舗で受け取る「BOPIS(ボピス)」など、生活者のニーズに合わせて広がっています。メーカーにとってはオンラインだからよい、オフラインだからよいのではなく、これまで以上に、どこで、どんな商品を、どんなお客さまが買ってくれたのかというデータの分析が重要になってきました。こうしたデータを一番持っているのが小売店です。リテールメディアをはじめ、小売店がこれらの情報を開示したことで、これまで流通での購買データの取得が難しかったメーカーは、リテールと組むことで、消費者一人ひとりの購買にもとづいた新しいマーケティングを実現できる環境が整えられつつあると感じています。

―トライアルカンパニーさんでは、どのような戦略を実行してい…

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