多くの人々が日常的にアクセスしているSNS。生活者にとってコミュニケーションの場であり、情報収集の場でもあるSNSを通して商品を販売する「ソーシャルコマース」のポイントとは。Shopify Japanの内河恵氏がソーシャルコマースの現状を説明する。
ターゲットの土俵で売上をつくるソーシャルコマースのメリット
世界人口の半数以上が何かしらのソーシャルメディアを利用し、その大半が1日に少なくとも1回はログインしているとも言われています。ECビジネスでターゲット層に大きくリーチしたい場合、ソーシャルメディアは非常に価値のあるリソースです。Statistaの統計によると、ソーシャルコマースは2020年に世界で約4,750億ドルの収益を生み出し、年間で28.4%の成長が見込まれ、2028年には3兆3,700億ドルに達すると予想されています。
ターゲットオーディエンスがいるまさにその場所で、売上を発生させられる点で、ソーシャルコマースは従来型のECよりも多くのアドバンテージを持つほか、以下のメリットがあります。
①なめらかなチェックアウト
従来のECサイトでは、ソーシャルメディアはユーザーを販売サイトに誘導するために用いられていました。ここでの最大の障壁は購入プロセスでつまずきやすいことです。購入を完了するためには、ソーシャルメディアでやっていることを中断して外部のECサイトに行き、また元の場所に戻ってくる必要があります。こうした追加のステップが要求される購入プロセスは、なめらかなチェックアウトプロセスとは言えません。
しかし、ここ数年でソーシャルメディアのプラットフォームは、購入可能な投稿(ショッパブルコンテンツ)やサイト上のストアフロント、専用のチェックアウトといったショッピング機能やツールなどを開発してきました。このようなソーシャルメディアのプラットフォームに用意されているソーシャルコマースのツールを使えば、この障壁を大きく減らすことができます。「いいね」や「フォロー」をタップするのと同じくらい簡単に、購入が完了するのです。購入にかかる面倒なステップは日々解消されつつあると言えるでしょう。
②売上とエンゲージメント向上を同じ場で叶える
優れたソーシャルメディアマーケティングプランは、新規顧客の発見と既存顧客の関係維持という2つの機能を同時に果たす必要があります。
ソーシャルコマースを使うと、この2種類のオーディエンスに同時に働きかけることが可能です。ブランド認知を惹起する投稿は同時に、検討フェーズに入っているユーザーに購入オプションを提供できます。
さらに、ユーザーがマーケティングファネルを通常よりも素早く通過し、「認知」、「検討」、「コンバージョン」が同じ場所で起こります。新たにブランドを発見したユーザーも商品が購入に値するものだという情報をすでに受け取っており、すぐ購入できる機能も用意されているわけです。
③巨大な市場規模
ソーシャルコマースで購入経験があると回答した人は2019年以降、増えており、冒頭に述べたように市場規模は拡大しています。コロナ禍でソーシャルショッピングに人々がより慣れてきたことを考慮すると、この傾向はさらに続くと考えられ、2025年には、37%のアメリカ人がソーシャルコマース経由で買い物をすると予測されています。多くの企業がソーシャルコマースを導入し始めているため、ソーシャルメディア上で直接買えるという機能は今後、付加価値というより、あって当たり前の機能ととらえられるかもしれません。
④ソーシャルプルーフの提供
私たちは購入を決断するときに他の人の意見を参考にする傾向があります。このような心理的な現象を「ソーシャルプルーフ」と言います。
ECにおけるソーシャルプルーフは“商品レビュー”、“購入者からのおすすめ”、“商品のランキング”など様々です。ソーシャルメディアは多くのユーザーにとって、情報との最初のタッチポイントであり、目に見えるソーシャルプルーフはフォロワーの獲得やオーディエンスの構築のために貴重なツールとなります。ソーシャルコマース経由で販売する場合、ソーシャルプルーフは売上を左右する重要な要素なのです。
⑤モバイルショッピングへの対応
モバイルECの売上は2021年に3,590億ドルに達しました。これは2020年から15.2%上昇した数字です。業界の専門家は、2025年までにモバイルECの売上が米国の小売EC売上の44.2%を占め...