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選挙戦とマーケティング

一方通行から双方向へ 広報発想の「政策コミュニケーション」とは?

橋本純次氏(社会情報大学院大学)

インターネットやSNSが浸透し、情報社会となった日本。しかし民主主義においては、国民・市民が正確な情報を得て自ら判断することを困難にしてしまうリスクもある。ビジネスのマーケティングにも通じる、日本の「政策コミュニケーション」の現在や今後のあるべき姿について、社会情報大学院大学の橋本純次助教が解説する。

民主主義と情報社会の不和 「正確な情報」と「信頼」が必要

間もなく始まる参議院議員選挙。候補者によるコミュニケーションも活発化していくことでしょう。本稿では、情報社会の民主主義にとって必要不可欠な「政策コミュニケーション」について考えます。

読者の中には、普段の生活の中で、すでにお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、実は「情報社会」と「民主主義」は非常に相性が悪いのです。

「いきなり、何を言い出すの?」と思われるかもしれません。インターネットは政治情報の絶え間ない流通を可能にしたではないか。テレビや新聞で報道されない真実がインターネット上にあるではないか。「アラブの春」のようにインターネットが革命につながった例だってあるではないか。SNSや動画サイトでは、一般市民が発信者となって政治に対する意見を述べることができるようになったではないか。SNSで発信する政治家もいて、政治家と国民との距離も近くなったではないか

──いろいろな反論があるでしょう。ただ確実に言えるのは、現代は情報が「多すぎる」ということです。

日本語に「情報」という言葉が出現したのは、1876年に陸軍少佐の酒井忠恕が、フランス語の'renseignement'という言葉を「敵情の報知」と訳したことが端緒であるとされています。戦場におけるコミュニケーションの流れは、「命令は上から下へ、情報は下から上へ」と想定されていました。下から吸い上げられた様々な情報に基づいてコマンダーが判断を下すわけで、情報とは本来「曖昧さを排除して、行動を決める手がかり」であったわけです。

ところで情報社会とは、どんな社会でしょうか。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)は、2018年に発表した報告書「Tackling the Information Crisis」のなかで、現代の情報社会には「5つの巨悪(Five Giant Evils)」が潜んでいると結論づけました。すなわち、Confusion(混乱)、Cynicism(不信)、Fragmentation(分断)、Irresponsibility(無責任)、Apathy(無関心)の5種類です。紙幅の都合上、一つひとつの詳しい内容に触れることはできませんが、簡単にまとめると、以下のようになります。

現代の情報社会には、信用できないものも含めて莫大な量の情報が溢れており、そのなかで人々は、何を信じたらよいか分からなくなっている。さらに、情報源が個人によって異なる状況は、すなわちそれぞれの人々が異なる「リアリティ」のなかで生きていることを意味します。そして、インターネットには無責任な情報が絶えず流通していて、そのような環境に置かれた人々は、次第に政治や他人に関心を抱かなくなる……。

さて、このような状況で、情報は「曖昧さを排除して、行動を決める手がかり」になり得るでしょうか...

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