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ネット誹謗とブランドの壊れ方

広告に関わる、ネット誹謗・炎上事件簿

宮宗唯(エルテス ソーシャルリスク総研 エバンジェリスト)

企業・ブランドに対するネット上の誹謗には、事実を起点にしたものと、まったく根拠のないものの両方が存在します。いずれにしても、ブランド毀損につながる恐れがあり、企業は事態を正しく把握して、適切に対応する必要があります。ここでは、テレビCMなどの広告を起点に発生したものを中心に、近年注目を集めた企業・ブランドの"炎上事件"を振り返ります。

熱量の高い少数の人が炎上の火力を強めている

ソーシャルメディア上の炎上事件は増え続けており(図1)、多くの企業・団体の広告・コミュニケーション担当の方が敏感になっていると感じます。

【図1】炎上件数の推移

何をもって炎上とするか、明確な定義は難しいのですが、エルテスでは、(1)短時間に50件以上のリツイートが行われる、(2)匿名掲示板やまとめサイトで取り上げられる、(3)ネガティブな論調で語られる、という条件が揃った状態を炎上と捉えています。

炎上が拡散する起点となるのは、いわゆる「有名人」というよりは、特定のテーマに関して強い意見を持つ、熱量の高いコミュニティの人たちであることが多いと言えます。

EPISODE1も、「女性の権利」について、日頃からさまざまな意見を表明しているコミュニティによって"着火"され、瞬時に勢いが増した事例です。そうしたコミュニティは、ボリュームで言えばごく小規模と言っていいものがほとんど。しかし、自分たちが強い関心を寄せるテーマに関連した話題が提供されると、積極的に議論し、拡散しようとするのです。

少数の人が高い熱量で拡散することで、ほかの一般ユーザーにも"問題"が広がっていきます。ほとんどのユーザーは、炎上の端緒となっている話題について、詳細な内容や事の次第を、それほど熱心に見ていません。話題自体は、実はそれほど深刻でも悪質でもないのに、一部の熱量の高いユーザーが投稿した辛辣なコメントだけを見て、「何かヤバいらしい」と認識して、気軽にリツイートし、それが炎上を加速させることが往々にしてあります。

広告にはクリエイティブ力に加え PR視点が求められている

いくつもの炎上事件を見ていて、非常に"不寛容"な世の中になっていることを感じます。企業に対して、ユーザーの鋭く厳しい視線が向けられている中、多様性に配慮しながらコンテンツをつくる知見は、まだまだ不足していると言わざるを得ません。とは言え、チェックリストやガイドラインがあれば炎上を抑止できるかというと、そうとは言い切れないのが現状です。また、そうして極限まで尖りを取り除いた広告は、広告としての訴求力を失う懸念があります。

最近よく聞くようになってきたのは、広告・コンテンツの表現について、消費者を対象としたアンケートを実施しているという声です。「面白いか」というよりは、「不快感を与えないか」という点に重きを置いて、消費者の反応を見ているそうです。

また、万が一問題が起こった時に適切に対応し、被害を最小限に抑えるための仕組みを、コンテンツの企画制作・配信とセットでソリューションとして提供している広告会社もあります。リスクをゼロにはできないけれど、最大限の備えをして、安心してリスクテイクしようという発想です。

以前から言われていることではありますが、広告と広報・PR、レピュテーションマネジメントは不可分で、もはや切り離せないものです。社会全体の関心が高まるテーマは時代によって変化しますし、企業が発信したメッセージがどう捉えられるかは"時の運"も含めコントロールすることができません。あらゆる会社が炎上に巻き込まれる可能性がある中、広告・マーケティングの担当者でも、広報・PRの視点を持つことが、ますます求められていると言えます。

問題の争点を見極める冷静な姿勢が必要

炎上に備えてできる、最も現実的な対策は、リアルタイムかつスピーディーに状況を把握する仕組みを整えることです。どんなメッセージを発信しても、それがどう受け取られるかはわかりません。

また、明らかに問題のある表現は予め排除できるよう、どの企業もある程度の対応はしているはずです。炎上の火種となるテーマは、これからも増えていくでしょうし、それぞれの問題に対する人々の意識・関心も、どんどん高まっていくことが予想されます。炎上を未然に防ぐより、「ある程度の炎上は、起こってしまうもの」と捉える。企業にとっては厳しい時代ですが、避けられない炎上に対しては"タフ"にならざるを得ません …

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