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超・コピーライター

ソーシャルメディア時代とコピーライター:東京大学・鳥海不二夫 × 電通・尾上永晃

東京大学・鳥海不二夫 × 電通・尾上永晃

世の中の変化に合わせて、コピーライターが活躍する機会は増え、領域は広がり続けています。「ソーシャルメディア時代」「地域活性」「デジタル」「若者心理」「働き方改革」という5つのキーワードを立て、各領域の有識者の皆さんとの対談を通じて、これからの"コピーライター"に求められる役割を考えました。

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"ソーシャルメディア時代" × コピーライター

話題化の「方程式」はあるが、それだけではつまらなくなる

鳥海:ソーシャルメディアデータの分析を研究しているので、ソーシャルメディア上で多くの人が話題にしている広告には注目しています。尾上さんが手がけた「10分どん兵衛」も面白かったですね。特に、渋谷駅の「どんばれ屋」が閉店する際の"店長の最後の言葉"は話題になっていました。

よくSNS上を「口コミで広がる」という言い方をされますが、データで見ると、実態は少し異なります。口コミによって狭い範囲で盛り上がった話題が、Webニュースやブログで取り上げられて、それが口コミで広がって、またメディアに取り上げられて―というのを繰り返して、大きく広がっていきます。多くの方がイメージする、「共感の輪が広がる」というイメージとは違って、拡散の起点になるメディアがあって、そこが話題化をドライブさせているという捉え方が正しいです。

尾上:確かにそうですね。僕は、デジタルプロモーションを中心に企画していて、「どんなコンテンツが、どのクラスターで話題になって、どこへ派生していって」……という情報拡散のメカニズムはある程度把握しているのですが、鳥海先生がおっしゃる、情報拡散の起点となるメディアそれぞれに紐づいているユーザーは、ボリュームで言えばかなり限定的だと、日々実感しています。

鳥海:私は炎上事例を中心に研究しているのですが、Twitterでキャンペーンが張られると、まず「2ちゃんねる」で話題になって、系列のまとめサイトでまとめられて、それがTwitterのタイムラインで広がっていくのが最も多いパターンですね。特に、2ちゃんねる系列のものをはじめ、ボット活動が活発なまとめサイトは、話題化を加速する力が強いと思います。ボットで広まるのは、あまり健全ではないと思うのですが……。

―尾上さんは、キャンペーンを企画する際、情報が拡散する道筋をどの程度意識していますか。

尾上:"話題化の方程式"のようなものは、あまり使わないようにしています。方程式に則ってつくられているキャンペーンは、互いにどこか似通ってきてしまう。すると、受け手からすれば「(どの会社の広告かは知らないけれど)面白いよね!」という印象に終始してしまい、広告としては失敗です。広告というものは、基本的には他と違うということで広告たり得るからです。

ただ、「メディアに取り上げられたときの出方」は強く意識しています。多くの人が、広告・キャンペーンの話題を、手元のスマートフォンのニュース記事やまとめ記事の見出しで知りますから。こちらが意図したのとちょっと違う形で広がっていくことも往々にしてあるのですが。

鳥海:ネットで何かが話題になっても、元ネタ自体にはさほど興味がない人がほとんど、ということが多いですよね。「多くの人が騒いでいるから、自分もそれに乗っかっておきたい」くらいの軽い・薄い関心なんです。

炎上のデータ分析をしていると、本気で心配をする必要はないのでは、と感じるものがほとんどです。ある商品に対して批判的なコメントをしても、その後はまったく言及しない。そんなことが全く珍しくありませんから。いつまでも特定の話題を気にかけることはなく、いとも簡単に次の興味対象へと移っていきます。

尾上:わかります。炎上すると意識はしてくれるんですよね。ですから、話題になったその先で、より深く商品自体にも興味を持ってもらえるようにと、常に意識しています。

例えば、日清食品の「カップヌードル パスタスタイル」のキャンペーンは、そのための仕掛けを施した一例です。何をしたかというと、商品に「イタリア人が認めなかったパスタ」というキャッチフレーズを与えたんです。この言葉を受け取った人は、「(日本では)認める?それとも認めない?」と自ら選択することになる。言葉が広がると同時に、商品に関与してもらうことができるのです。たとえブランドサイトにアクセスするまでに至らなくても、商品自体に興味を持ってもらいやすい仕掛けをした結果、想定の3倍の速度で売れました。

「10分どん兵衛」も、商品の中身のことが伝わるよう工夫しました。「【おわび】日清食品は10分どん兵衛のことを知りませんでした。」という謝罪だけが話題になっても、「日清が謝罪したwww」ってなるだけで意味がない。

そこで、商品への関心につなげていくためには …

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