自社メディアを立ち上げ運営してきた実務家の2人が、オウンドメディアの変遷を振り返りながら、メディア運営でつまずきがちなポイントや成果をどのように測っていくかについてアドバイス。メディアの目的を見失わないことが、活用の鍵となる。

ディー・エヌ・エー
経営企画本部
コーポレートコミュニケーション統括部
大槻幸夫氏(おおつき・ゆきお)
2000年レスキューナウ創業。2005年サイボウズに入社しマーケティングに従事。2012年オウンドメディア「サイボウズ式」を立ち上げ、初代編集長を務める。2015年よりコーポレートブランディング部部長。2023年2月より現職。

アクティブ
CEO
藤原尚也氏(ふじわら・なおや)
1996年カルチュア・コンビニエンス・クラブに入社。外資系化粧品企業に転職。肌荒れケア、コスメのデジタルマーケティング責任者を務め、2016年に独立しコンサルティング事業を行う。
オウンドメディアの変遷と現在地
─以前、オウンドメディアを立ち上げた際の経緯について教えてください。
藤原:私がスキンケアの情報サイトを立ち上げたのが今から10年前の2014年。私は外資系化粧品メーカーに所属していました。当時は、商品の背景やユーザーの声を知りたい場合、商品比較サイトやアフィリエイトサイトを見に行くのが一般的だったので、企業のウェブサイトは、商品を売るための情報がほとんどを占めていました。
そうした中、自社に関する情報以外も積極的に発信するメディアを企業が運用すること自体が珍しい時代でした。
アフィリエイトサイトが「商品ありき」で語られる情報であるのに対し、スキンケアコンテンツサイトは、肌荒れに悩んでいる方に対して正しく情報を伝え、悩みを解決することを目的に、7年間運用されました。開始当初、ウェブ上には、他サイトのコンテンツを複製したミラーサイトも多く存在していたので、自らできちんと取材し著作権をクリアした画像を掲載するメディアを運営することで業界に風穴を開けたいという意気込みもありました。
大槻:2012年、サイボウズのオウンドメディア「サイボウズ式」を立ち上げました。企業としての認知度向上が目的です。ちょうど売上が横ばいになっていた頃で、従来のネットマーケティングや製品プロモーションに限界を感じる中で、新たなコミュニケーションにチャレンジしようと目をつけたのがオウンドメディアでした。製品を生み出す企業自体の魅力に気づいてほしい、そんな思いから提案したところ、広告より費用がかからず始められることもあり企画が通りました。
当時、新しいサービスをどんどん出していくタイミングだったので、社内の情報を自分達で伝えられるメディアは、組織全体の方向性とも合っていました。「サイボウズ式」のターゲットは、サイボウズのことを知らない人。どんな記事ならば読んでもらえるか、記事を出しながら探り、結果として「働き方改革」に関するコンテンツがメインになっていきました。
─オウンドメディアの変遷をどのように捉えていますか。
藤原:スキンケアコンテンツサイトを立ち上げた頃は、「アドテク」という言葉がよく聞かれ、ウェブ広告への投資が活発になった時期でウェブ広告の受け皿となる「ランディングページ」に注力する流れがありました。ところが、ランディングページの工夫だけでは新規顧客が獲得しにくくなってくると「自分達のことを正しく伝える必要がある」「誰に何を伝えたらいいのか」と原点に立ち返り、改めてオウンドメディアの重要性が議論されるようになりました。
検索サイトのアルゴリズムによって偽サイトが淘汰され、検索に対して正しい情報が表示されやすくなったことも追い風になりました。さらに...