企業姿勢や事業の裏側、奮闘する人の想いを発信し理解や共感を得る。企業成長に欠かせない発信を、多様なステークホルダーの記憶に残すには。
今回は、企業ストーリーと「従業員エンゲージメント」の関係について考えていきたいと思います。
ストーリーの語り手を見出す
そもそも従業員エンゲージメントが高い状態とは、どのようなことを指すのでしょうか。会社や事業に愛着をもって業務に取り組むことはもちろん、仕事への「誇り」や「社会的な価値」を感じている状態にある――。こう捉えると、エンゲージメントが高い従業員は、会社で働くことを通じて、社会や地域、家族など、社外のステークホルダーと良好な関係が築けると感じているはずです。これは、個人としてパブリックリレーションズ*1が良好な状態に近い、と私は考えています。
*1日本広報学会(2023)による広報(パブリックリレーションズ)の定義:「組織や個人が、目的達成や課題解決のために多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である」
こうした状態にある従業員が当事者となって奮闘する物語には、会社を超えた社会的な観点が含まれやすく、客観的で強いストーリーが生まれるでしょう。また、仕事に対する誇りや愛着など個人の内面で感じる価値と、社会や会社、上司からの評価との葛藤を乗り越えた人の話には一貫性がありますから、共感が得られやすいはずです。
広報担当者がこうした従業員を見出し、ストーリーの主役として社内外に発信することは、当人のエンゲージメントを再確認あるいは強化するだけでなく、他の従業員のエンゲージメントにも影響を与えることが期待できます。
プロアクティブ型に注目
先ほど、従業員エンゲージメントを「高い」と表現しましたが、高い・低いという一軸の評価ではなく、類型で理解すると、ストーリーの語り手に適した従業員を見出しやすくなるはずです。
同志社大学社会学部の松山一紀教授によれば、会社の中には、経営者や管理職のリーダーシップに対して「受動的」に行動して成果を上げる従業員もいれば、「能動的」あるいは、「プロアクティブ」に行動して、自分の仕事をつくるタイプの従業員もいて、図のように3つに分類することができます。
3つのタイプを、企業のストーリーテリングへの関わりの観点で整理してみると...