企業理念や目指す方向性が伝わってくる展示(1)
企業の軸となる理念、創業精神。それをもとに積み重ねた歴史、目指す未来。一言で伝えきれない大切なメッセージをどう伝え共感を得ているのか。企業ミュージアムの注目展示を見ていこう。
企業ミュージアム 五感に訴えるコンテンツ編集術
実体験できるコンテンツも企業ミュージアムの醍醐味。サービスを擬似体験したり、製品を通して自社の工夫や技術力を訴求したり、映像自社の歴史を体感してもらったり。来館者の体験から、より深いブランド理解につなげている例を見ていこう。
「宅急便体験コーナー」では、ヤマト運輸セールスドライバーの制服を着用、運転席と荷台が一体となった構造のトラック「ウォークスルー車」へ乗車できる。実際に運転席に座ってみたり、立ったまま作業ができる車内の工夫を見学したりしながら、ロールボックスパレットへの荷物積みつけを体験。宅急便が届くまでの仕組みを学ぶこのコーナーは、子どもだけでなく大人にも人気。
新しい「宅急便」というサービスを創出するまでの壁も、目に飛び込む形で展示。
宅急便が届くまでの流れをイラストと映像で紹介。
2019年に創業100周年を迎えたことを記念し、企業価値の向上や社会貢献、インターナルブランディングを目的として、2020年7月に開館。スロープをらせん状に下りながら見学できる。上から順に創業時代から未来に向けた取り組みまでを展示。ミュージアム(6階)があるビルは、7~10階がオフィスフロア、1~5階が集配拠点の営業所。「つなぐ」をテーマに顧客との交流空間として建築。
館の形態:ヤマト港南ビル内
来館者の平均滞在時間:60分
所蔵品数:約500点 ガイドツアー有
ミツカングループの歴史をたどる「時の蔵」エリアでは、江戸時代に半田から江戸まで酢を運んだ和船「弁才船」をほぼ実物大で再現展示。船の甲板から見える大型ビジョンでは、当時の様子を描いたアニメーションを投影。酢を運ぶ航海を疑似体験できる。アニメーションには、浮世絵を再構築したデザインや、酢のタイポグラフィーが採用されている。
そのほかにも「天秤棒で酢を運ぶ」「樽を叩いて酢の量を確かめる」といった、江戸時代の酢づくり職人の知恵と工夫を体験できるコーナーを用意。また、昔の酢づくりを体験する「大地の蔵」エリアの梁、柱などの一部は実際の生産工場で使用されていたもの。微かな木の香りを感じることができる。
天秤棒と桶を使って、江戸時代の酢の運搬体験ができるコーナーも。
「大地の蔵」エリア中央の桶の底は覗き窓になっており、覗いてみると併設の酢の生産設備が。江戸時代から続く酢づくりの進化を伝えている。
2015年に体験型博物館としてオープン。ミツカングループの歴史に触れ、未来につなげるミュージアムに。半田運河沿いの蔵が...