『WBS』『モーニングサテライト』など、圧倒的に経済番組が多いテレビ東京。同じ経済ニュースでも、取り上げ方が他局と異なるスタイルであることも特徴だ。今回は、『WBS』の実際の放送を事例に、制作側の意図を浮き彫りにする。
「テレビ東京の番組は、ユニークですよね」。初対面の広報担当者から、挨拶代わりのように言われるのがこの言葉だ。私の古巣・テレビ東京のニュース番組は、他局と比べて圧倒的に経済ニュースの比重が高い。他局と異なる「独自路線」と言われるのも当然だろう。
ユニークなのは、経済ニュースの「量」だけではない。今回は、テレビ東京と他局の経済ニュースとの「中身」の違いを考えてみたい。
なお、他局には『ガイアの夜明け』や『カンブリア宮殿』のようなドキュメンタリー枠はほとんどないので、今回は『WBS』(毎週月~金曜日、23時~23時59分)に絞って述べていく。ほぼ同じ時間に放送されている日本テレビの『news zero』と比較することで、違いを浮き彫りにしていきたい。
コメントの中身に注目しよう
ここでは、2019年を代表する経済ニュース、「ヤフーの親会社ZホールディングスとLINEの経営統合」を例に考えてみよう。
"統合交渉"の第一報が流れたのは11月13日。この日は『news zero』も『WBS』も、1分程度のVTRにスタジオでのコメントを交え、速報として伝えている。VTRの内容そのものは、どちらの番組もほとんど差はない。共同持株会社のあり方など、想定される統合の大枠を伝えていた。
大きなニュースを速報として伝える際に、VTRの内容に違いが出にくいのには理由がある。1分のVTRを原稿の文字数に換算すると400字程度。両社の公式見解など、「現時点で最低限伝えなくてはならない項目」を盛り込むだけで精一杯だからだ。
こうした速報の際に、番組としての違いが出やすいのは、スタジオでのコメントだ。コメンテーターの人選、そしてコメントの中身に「番組が何を重視して伝えているか」がはっきりと現れることがある。
というのも、コメンテーターはその場の思いつきで語っているわけではないからだ。事前に番組制作者と「ニュースのどの側面に焦点を当ててコメントをするのか」などと打ち合わせをしたうえで、コメントの内容を決めている。つまり、番組制作者が重視している価値観が反映しやすいのだ …