テレビ局へのアプローチ方法はそれほど単純ではない。広報のテレビ攻略法を巡る誤解の“根元”を、経済番組のディレクターを務めた経験をもとに解説する。
私は、テレビ東京で『WBS(ワールドビジネスサテライト)』や『ガイアの夜明け』のディレクターを務めていたとき、番組制作者として何度も感じたことがあった。それは、多くの企業には素晴らしい「素材」があるにもかかわらず、適切なアプローチ方法を知らないために、番組で取り上げられる可能性を逃しているということだった。
これは当の企業にとってはもちろんのこと、少しでも多くの企業や人々の挑戦する姿に脚光を当てたいと願う番組制作者にとっても不幸なことだ。
このように、広報がメディアに適切なアプローチができない理由として、世の中に正しい"テレビ攻略法"があまり知られていないことが挙げられるだろう。
例えば「番組スポンサーと競合する場合は、取材されない」「そのまま番組になるような企画に仕立ててから、番組制作者に持ち込まないといけない」「画になりそうなネタをあらかじめ仕込んでおくべき」「プレスリリースを送っても大半は読まれないので、まずは番組制作者との人脈をつくるべき」などとよく耳にする。しかし、これらはいずれも、報道番組の現実から大きくかけ離れた「攻略法」だ。
経済担当は全民放で200人?
「なぜ、こんなに間違った情報を堂々と流しているんだろう……」。私はテレビ東京を離れた後、テレビ報道について書かれた様々な情報に「初めて」目を通し、このような感想を抱いた。
視聴者が想像で好き勝手なことを書くのは仕方がないだろう。だが、一部の「PRのプロ」と称している方々までが、根本的に誤った情報を発信していることには驚いた。なぜ一部のPRのプロにまで正しい情報だと信じられているのか。そこには3つの原因があるようだ。
❶ "実情"を知る人間が少ない
テレビ局の社員で、特に企業取材を専門としている報道ディレクターはどれほどいるだろうか。
私が在籍していたテレビ東京だと、報道局には約100人が所属している。このなかには警察、検察、裁判所などの記者クラブに所属する者、海外支局員、ロイターなど国外の通信社が伝える情報を扱う担当者、カメラマンなどの技術スタッフも含んでいる。なので、実際に経済を専門としている人間は、その半数程度だ …